先号

統合マネジメント談義(11) (まとめ)

PMリソースセンター長
(有)デム研究所(http://www.dem.co.jp) 城戸 俊二:6月号

 WBSをキーワードにした“統合”談義も先回で10稿になったので、ここら一旦筆を下ろしたい。そこで本稿では筆者が考える“統合マネジメント”の源を紹介して本シリーズの終稿とする。

【統合マネジメントの論理構造】
 まず本シリーズではPMの原理原則や考え方など筆者の気の向くままに解説してきたが、本シリーズの纏めとして以下の2点が統合マネジメントの核として重要であることを再確認したい。

 まず第一に統合マネジメントの最終目的はプロジェクトのコストパフォーマンス、スケジュールパフォーマンスを計画通りに達成することであるが、図-1「PMのコアのコア (PMコア)2」はその目的を達成するに当たり、基盤(骨格)となるPM要素技術は何か、そしてそれらは如何に関係し合っているかを示している。此処に出てくるPM要素技術はスコープマネジメント、タイムマネジメント、組織、成果測定、およびワークパッケージ(或いはワークエレメント)である。この図で判ることは要素技術間の論理構造とそれぞれ項目に従属する定量情報であって、物事を集約する範囲(パッケージの大小)、および時間情報或いは作業のフェーズは判らない。図-1の詳細解説は本談義(WBSその3)をご覧頂きたい。

 次いで図-2「WBSの構成」は物事を構造的に捉える方法を示している。プロジェクトマネジメントではプロジェクト進行途上で何時でも“全体の状態が判り、細部も判る”仕組みが必要であるが、図-2に示すWBSがその仕組みを可能とする。図-2ではプロジェクトの仕事はどのように分解(ブレークダウン)され、或いは最下位のワークパッケージからどのようなルートを辿ってデータが集計されるか、その道筋が判るだけであり、その内容および定量情報は見えない。そこで各塊の内容を定量的に示すためにワークパッケージ(Work Package:WP)とワークエレメント(Work Element:WE)の考え方が必要となる。
 図-2に示すWPおよびWEは図-1の右端に示すWork Package(注:WEは省略)と同じもので、これを介して各PM要素技術とWPやWEの状態情報が論理的に繋がり、プロジェクト全体及び細部の状況を定量的に捉えることを可能としている。


図-1 PMのコアのコア 図-2 WBSの構成
図-1 PMのコアのコア(PMコア)2 図-2 WBSの構成

【パフォーマンスマネジメントシステム構築/運用の手順】
 図-1と図-2でプロジェクトのパフォーマンスマネジメント情報処理の仕組みを判って頂けたと思う。しかしこの理屈は判っても、PMの実務でこのロジックを基にしたマネジメント情報を得るためには予め情報を仕込んで置かねばならない。適切な質と量の計画情報の振り付けである。これを怠ればプロジェクト進行途上でそのしっぺ返しを受けること必定(駄弁:諸先輩PMはこれを反面教師として経験を深めた)。

 そこで自分の目的に適うマネジメント情報システムを如何にして作り上げるかが課題となる。図-3はProject Performance Management Process(PPMP)と称して筆者が一昨年のJPMF主催プロジェクトマネジメントシンポジウムで発表し、昨年のシンポ二日目セミナーで改版したものである。内容は見ての通りであるが、これの要点は縦軸は段階を追ってプロジェクトコントロールベースライン作り運用するまでのライフサイクルプロセスで、横軸はそのベースラインの骨組みとして埋め込まれるマネジメント要素である。横に広がったピンクの網掛け部分はPMBOK®で言う統合マネジメントとの関わりが強いところである。また各要素技術の列の最上段(0.xxxxxの記述)の情報はプロジェクトを企画する以前に企業として整備すべき情報で、プロジェクトが収集するものでなく、プロジェクトマネジメントオフィスが予め或いは事業のアーカイブとして整備しておくものである。図の拡大図がご入用の方は本稿冒頭のURLからダウンロードして下さい。

Project Performance Management Process
図-3 Project Performance Management Process

【まとめ】
 11稿を通して統合マネジメントの仕組み、考え方、方法論などを述べてきたが、この仕組みを生かすも殺すも質の良い情報と質の良い人材が有ってのことである。中でも統合マネジメントとマネジメント人材との関わりは欠かすことが出来ない要素であるが、筆者は人間系について読者のお役に立つ情報を提供できるレベルではないので、もっと研鑽を積んだ後、機会を見つけてご披露することとしたい。最後に、11稿に亙り拙稿を読んで頂いた読者諸氏に厚くお礼を申し上げます。
以上