プロジェクト・コミュニケーション・文化(最終回)
板倉 稔:5月号
この連載も、14回目になりました。このたび、コミュニケーション・プロトコルWGは、小冊子「ヒューマン・コミュニケーション技術とコミュニケーション・プロトコル」をまとめ終了しました。この終了により、本連載も今回で最終回にします。ご講読ありがとうございました。
このコラムを書き始めたきっかけは、なぜ日本のシステム開発力が弱くなってしまったのだろうかという思いからでした。
なぜ、1990年に、デマルコに「日本に学ぶべきことが沢山ある」と言わしめた日本のシステム開発力が弱くなってしまったのだろうか。なぜ、日本のソフトウェア業界は、欧米の方法論をそのままとりいれようとするのだろうか。
欧米の方法論は、自分の弱点を補完する方法論である。欧米は、1970〜90にかけて日本を観察し、自分の弱さを知りそれを方法論に仕立て上げた。特に米国は、Not
Invented Hereの国だから、観測して得たことも、自分が発明したと主張する。日本は、逆に自分で発明したことも、欧米の誰かが言ったということで権威付けする国だ。方法論を輸入する原因の一つは、これである。他にも原因があるかもしれない。また、再び強くなるには、どうすれば良いのかを考える必要があると思った。
今から5年ほど前、掲記WG発足当時に、欧米の弱みを補完する方法論を、そのまま日本に持ってくることは、我々の強みを消してしまうことになると危機感を持った。
一方、エンジニアリング業界から、「2000億円のプロジェクトをターンキーでとれるのは日本勢だけだ」という威勢のよい声が聞こえてきた。欧米が枠組みを作り、そのなかにPracticeをためたることが出来たのは日本だけだという主張であった。考えてみると、トヨタは、「トヨタウェイ」という冊子を世界のトヨタの工場に配って、日本流を世界に根付かせようとしている。この2つの事例では、自分の強みを活かしている。
では、ソフトウェア業界ではどうだろうか。CMM, ISO, EVMなどなど、色々いれようとしてきたが、強くなったとは思えない。今、これに気がつき始めている人達が増えつつある。昨年、4月に発足した日本品質管理学会のソフトウェア部会でも、日本の知恵をまとめておく必要を認識している。今後、様々な活動が様々な所でおきると思われる。皆で日本の強さの復活をすすめていきたいと思う。
プロジェクトの基礎はコミュニケーションにあり、その基礎は文化にある。本項のテーマである「プロジェクト・コミュニケーション・文化」は、そう言うつながりである。文化は国の共体験の結晶であるから、ここから強みを解き起こさなければならない。
最後に、途中何度か、本コラムを書くのをやめようと思ったが、渡辺さんの励ましで続けてこられました。ありがとうございました。
板倉稔
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