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「グローバルPMへの窓」第6回
PM資格の話◆その1

GPMF会長  田中 弘:3月号

 今回から4回連続でPM資格の話をしたい。ふつうであると、PM資格とは何か、世界にはどのようなPM資格があり、その内容は、という順序で解説していくべきであるが、P2M資格と他のPM資格との相互認証の可能性はあるのか、という質問が結構多いので、いきなりこの話題から入ることとする。
 「PMSを取得したが、どうも知名度はPMP®ほど高くないようだ。PMSとPMP®が相互認証をしてくれたらよいが、その可能性はあるか」、「PMAJとなってPM資格間の相互認証はやりやすくなるか」、「PMSとPMP®の両方持っているが、資格の維持のためには、別々に学習ポイント認定講座を受講する必要があり、手間も金もかかる。なんとかならないか」というのが主たる質問である。
 答えは、"相互認証"は当分のあいだないであろうが、"相互認知"は、P2M資格保有者が高いパフォーマンスをあげて、またPMAJがグローバルPM界で存在感を高めることによって可能である、と言いたい。いささか歯切れが悪いが、次のようなことだ。
 「認証」というのは公的な機関が法に照らして確認を行うこと(たとえばNPO法人の設立申請で、NPO法で定められた所轄庁が、NPO法の要件を満たしているかどうかを確認すること)で、「相互認証」とは、二つ以上の資格認定機関が、各々で認定している資格等について、各々の所轄庁が相手の資格について、自らの資格制度が基づいている法や規格に照らして内容検証を行って、同等性を確認することである。
 たとえば、米国やアジアの国々が制定しているプロフェッショナルエンジニア資格であれば、各国の政府機関が準拠職業法に基づいて認定している資格であるので、相互認証に馴染む。
 しかし、PM資格は、今のところ、世界中のどれをとっても、民間団体が団体の規則や規格に基づいて認定をしている完全な民間資格であり、また資格の有無を以って職業の実践を規制するような職業ライセンスとしての資格ではないので、相互認証は行いようがない。つまりPMは任意資格である。
 またPM資格は、認定するPM協会、またはそれと連携する資格認定機関の主たる収入源であるというビジネス上の事情がからんでいるので、資格を認定する側に同等性の相互確認を行うインセンティブは働きにくい。
 たとえば、この事情を踏まえてないヨーロッパのIT業界の人から、PMIとIPMAの資格間での同等性確認を求める声が常に出るが、両協会からは、「2つの協会の資格は目的も、思想も異なるものなので同等性を保証する意味はない。両方とも優れた資格であり、片方を持っていれば、もう片方に挑戦するのも容易なので是非両方取得してください」と軽くかわされるのが常だ。
 しかしながら、ある資格を持つ側からすれば、相互認証ではなくても、グローバルPM界でその資格の価値を実証し、事実上の同等性を認めさせる相互認知を追求していくことは十分にできるわけで、PMAJの誕生によって、これに向けての一歩踏み出したとは言える。
 以上を要約すると、
  1. 相互認証というのは、国が介入できる分野での、国益を背景としての2国間以上の同等性確保のプロセスであるが、
  2. PM資格は世界中すべてで完全な民間資格であり、
  3. 資格を認定するPM協会は、自らの会員保護と経済性の追求がミッションであるので、他のPM資格の同等性を認めることは行いにくい、
  4. 従って、それに代わる実質的な同等性確認を世界のPM界に求める必要がある、ということである。
 2つの資格を同時に維持するのをなんとか手間をかけずにやりたい、という声に対しては、多くのPMAJのセミナーでは、現在PMS用のCPUとPMP®ようのPDUを両方発行して便宜を図るようにしている。
 次回はPM資格の由来について解説したい。