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「既得権益は組織や個人を駄目だめにする特効薬

編集長 渡辺 貢成:1月号

 既得権益とは何かと心地よいものだと聞いています。日本は既得権益者の巣窟のような国になってしまいました。私は既得権益者を眺めていますと、「本当に得なのか」という気がします。既得権益者はその権益を守るために、世の中が変わっても、旧い体質をそのまま維持することを考えています。環境が変わっているのに、目をつぶって、変化を受け付けないのですから、自分自身が努力をしません。従って社会からどんどん遅れをとってしまいます。彼らは決められた枠の中でしか生きられない動物となってしまいます。変化のない時代はそれでよいのですか、現代のように変化の早い時代では、枠から外れると食べていけない生き方をしているわけで、実は最も危険な生き方をしているのではないでしょうか。

 では、現代を眺めてみましょう。熾烈な競争の中で生きている民間企業は変化に対応するだけでなく、リスクを取れない企業は生きていけない時代に突入しています。大変な時代ではありますが、またビジネス機会が拡大し、成功者となるチャンスもあります。グーグルは設立8年目ですが、社員数1600人で時価総額は5兆円です。日立製作所は32万人で2兆円です。その意味で実力者にとって面白い時代でもあるわけです。他方この面白い時代にもかかわらず既得権益者が街頭で何々反対といつでも反対を唱えていますが、本人は面白いことを放棄していることに気が付きません。

では自分の経験は役に立つのでしょうか。日本人は概して会社人間と見られています。その会社で役に立つことしか興味ありません。会社を離れると何をしていいかわからない人が多くいます。定年後家庭に入ると、「俺も行く族」という人種になるそうです。奥さんが出かけると「俺も行く」と付いて行きたがるそうです。ここで奥さんに毛嫌いされるようです。この例からわかるように、その会社でしか役に立たない経験者が多いようです。考えてみると、これらの経験は自己だけにしか通用しない既得権益ともいえます。

 経験につき再度考えて見ます。重要なポイントは「経験とは、何処でも役に立つ経験の仕方を、経験する前に企画しないと応用がきかない」ということです。経験を企画するという発想が必要だということが第一点です。
 二番目は新しい仕事や、新しい社会で活躍するには、自分の持っていない新しいことを常に吸収しながら仕事にのぞまなければなりません。新しい環境になじむ努力が必要です。新しい環境で発想の異なる(文化の違う)人を理解する努力が必要です。それに新しい仕事に必要なことを学び、実行する意気込みが必要です。この努力をすることで、今度は逆にあなたの中に蓄積された過去の経験が俄然力を発揮します。「既得権益、捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、グローバル社会」。

 力の強い人が生き残れるとは限らない。賢い人が生き残れるとは限らない。変化できる人だけが生き残れるのがグローバル社会ではないでしょうか。

以上