次号
  「グローバルPMへの窓」第1回
グローバルPM界とは
GPMF会長  田中 弘


 編集長から、世界のPM界についての話題をシリーズで提供してほしいと注文を受けました。社業で国際業務を担当する傍ら1980年代の中盤から、(財)エンジニアリング振興協会のPM外交担当を務めたことから筆者の世界への窓が広がりましたので、玄関口からと若干裏口から世界PM事情を書いてみたいと思います。
 何度かジャーナルで書いておりますが、プロジェクトマネジメントの世界には、業種固有の、企業のPMと、プロフェッショナルPMと呼ばれる、PM職にある人々を支えるPMインフラを構成するPM協会などが推進する、PMのプロフェッショナリズムの推進という2つの系統があります。世界のPM界と言った場合は通常後者を指します。企業のグローバルPMについてもいずれ書いてみますが、第1回目は、だれが世界のPM界を作っているかについてお話しします。
 PMI®と米国統計局の調査によると世界には1,650万人のPM実践者がいるとのことですが、これらの実務家のための職業インフラを作ってくれるPM界は圧倒的にPM協会、つまりPM実践家の力が強い世界です。ここでは伝統的な権威である政府や学者の影響力はごくわずかです。世界最大のPMIは今年末までに会員数が20万人に達しようとしており、また、これに続く3.5万人のIPMAなど、PM協会は個人としてのPM実務家が仕切っています。各協会の主要職にある人たちも一部の国を除いては、社会的に高い職位にある方たちではなく、ごく普通の人たちです。
 もちろん、政府・自治体に所属する公務員や大学の教職者がいないわけではありませんが、彼らもすべてPM実践家としての資格でPM協会に貢献しているわけです。PMスタンダードの制定や改定あるいはPM資格認定などの委員も実務家主導で、官や学を権威として据えるということは行いません。
 この辺の仕組みは我が国の関係者にはなかなか理解しにくいことで、時々ボタンの掛け違いが起こりますが、日本もグローバルPM界の一部を構成しているということを考えれば世界の仕組みに合わせるほうがよいのではないでしょうか。その点我がJPMFはグローバル標準であるか??
 皆さんも自覚しておられるようにプロジェクトマネジャーあるいはPM関連職にある人はセルフスターターでフリーシンカー(自由な発想をする人)ですので、自らの手で自らの職業インフラを築いていくことは大変良いことですが、反面、PMの職業としての確立(Professionalization of project management)では、既存の高度専門職や、その途上にある職業の関係者と比べると政治力がないとか、規律に欠けるというリサーチ論文がでてきています。このへんの議論は追って紹介したいと思います。 :

以上