【基調講演-1】 土俵を創る
歴史観に基づく競争の近未来像
9月1日  9:55~10:40  
 講演者 神戸大学大学院 経営学研究科 教授 三品 和広
 セッション概要  19世紀以降の世界を振り返ってみると、競争の焦点は明らかにシフトしてきた。モノづくりに過度に執着していると、日本は琥珀に閉じ込められた国になりかねない。
 確かにモノに対するニーズは存続するであろう。しかし、その点は農産物も同じである。かつてはGDPの3分の2を占めた農業も、いまや1%を割るところまで来てしまった。我々は依然として食べなければ生きていけないのに、工業の力によって生産性が飛躍的に向上した結果、農業が経済全体に占める位置は嘘のように低くなってしまったのである。いまは考業の力によって工業の生産性が飛躍的に上がっており、その地位低下が着実に進行している。まだ製造業はGDPの15%以上を占めているが、それが10%を割り込む日は決して遠くない。そういう日に、日本がモノづくり貧国になっていないことを祈るばかりである。
 適応すべき変化とは、長い目でみると、このような性質を持っている。世界をリードして豊かになるのは、ネクストステージを創った国だけなのである。日本企業は、テレビや電力という既存の土俵のうえでイノベーションに賭けることにより、このところ連戦連敗の手痛い目にあっている。それにも懲りずIoTやAIのようにアメリカ勢がセットアップした土俵のうえに後から割り込んでみても、何も変わらない。創るべき変化とは、世界初の土俵をセットアップすることと胸に刻みたい。
 講演者略歴
三品和広氏
1982年 一橋大学商学部卒業
1984年 一橋大学大学院商学研究科修士課程修了
1989年 ハーバード大学文理大学院博士課程修了
1989年 ハーバード大学ビジネススクール助教授
2002年 神戸大学大学院経営学研究科助教授
2004年 神戸大学大学院経営学研究科教授
著書『モノ造りでもインターネットでも勝てない日本が、再び世界を驚かせる方法ーセンサーネット構想』三品和広(著)、センサー研究会(著)、東洋経済新報社、2016年。『経営戦略の実践1:高収益事業の創り方』東洋経済新報社、2015年。『リ・インベンション』東洋経済新報社、2013年など。
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