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問いを持ち続ける力

井上 多恵子 [プロフィール] :9月号

 先日、職場の元同僚に会った際、「仕事はどう?」と聞かれた。私の回答は、「すごくハッピー。天職だと思っている」。同じ会社の中で、役職も年齢も背景も異なる人たちに、グローバルコミュニケーション力(=英語)を教える日々。自分の得意なことを生かし、毎回「ありがとう」と喜んでもらえ、対価までいただける。人間関係もよく、上司もいない。通勤時間がかかるようになったのに、それがまったく苦にならない。むしろ、親しい友人に会いに行くような気持ちで職場に向かっている自分がいる。こうして理由を彼女に伝える中で、あらためて「私は、なんて恵まれているんだろう」と思った。
 彼女に伝えた理由は、何度も繰り返し誰かに話してきたものだ。自然とスラスラ言えるようになっており、「ああ、私は本当にこの仕事が好きなんだ」という確信に変わっている。 しかし先日、あるメールマガジンを読んでいる時、「振り返ることの大切さ」という言葉に触れ、今の仕事を好きな理由はそれだけではないことに気づいた。
 新たに見えたのは、週に1回定期的にセッションをする人たちがいることが、「改善したい」と思ったことをすぐに反映できる機会を私に提供してくれているという事実だった。振り返ることの重要性自体は以前から知っていた。だが、それが自分の価値観と深く結びついたのは今回が初めてだった。常に自分のベストバージョンでいようとするために、自分がやったことを丁寧に振り返り、次に生かしていくこと。私は、それを毎週実践できる環境にいる。セッション中、受講生のために100%集中できていたか。学ぶことを「面白い」と感じてもらえていたか。説明はわかりやすかったか。相手の状況に共感できていたか。単純なミスを繰り返す受講生に対して、呆れるのではなく、「私も最初の頃はこの違いが分からなかった。苦手なことに挑戦してくれている彼らはなんて、偉いんだろう」と思えていたか。フィードバックは、最大限彼らの動機づけと成長につながる形で届けられていたか。それとも、ただ間違いを指摘するだけになっていなかったか。相手が話し終えてからフィードバックするようにしていたか。それとも気になる点があるたびに口を挟んでしまって、話す気持ちをそいでいなかったか。
 何かがうまくできなかったと思った時に、それをすぐにリカバリーする機会を得ることは難しい。その機会がない状況では、落ち込んだネガティブな気持ちを引きずり兼ねない。ところが、毎日のように複数回行っている英語のセッションでは、あるセッションで至らないことがあっても、それをずっと引きずるのではなく、次回のセッションで改善するポジティブなエネルギーに変えられる。そんな機会を日々得られていることが、落ち込み気分を引きずりやすい私には、特に嬉しい。
 今の仕事が好きな理由をもう一つ見つけられたのは、ずっと自分の中に「なぜ好きなのか?」という問いを持ち続けていたからだと思う。問いを持ち続けることで、表面的な理由だけでなく、もっと深いところにある「本質」に気づけた。
 問いを持ち続けることの重要性は、反町隆史さんが教師役を務めるドラマ「GTO」にも描かれている。彼は、別居中の奥様から繰り返し投げかけられる「グレートティーチャーとは何か」という問いに対する答えを探し続けている。アドバイスを受けて、AIに答えを求める場面もある。しかし、AIの回答が型にはまった優等生的なものだったため、「使えない」と却下する場面があった。表面的な答えではなく、実体験を通じて自分なりの答えを見つけようとする姿勢が印象的だ。このドラマには、他にもいくつかの本質的な問いが散りばめられている。「なぜ自分は生きていなきゃいけないのか?」「なぜ先生になったのか?」「なぜ二倍速で動画を見るのか?」。制作者たちが今の世の中に投げかけたい問いなのだろう。
 私もこれから問い続けたい。「なぜ、今の仕事が好きなのか?」 その問いを考えることを通して、自分の仕事の意味と私にとっての意義をより深く理解し、受講生と接していきたい。さらに、仕事以外のことでも、重要だと思える問いについては繰り返し自分に問い続けることで、思考を深めていきたい。問いを持ち続けることが、成長に繋がる。 これからも、問いを持ち続けていたいと思う。

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