PMプロの知恵コーナー
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PMプロフェッショナルへの歩み―19

向後 忠明 [プロフィール] :6月号

 前月号での状況分析から課題解決への対策として主に下記を取り上げたが、CAO単独で可能と思われるものから順番に①人事制度の改変②就業規則の改変と厳罰化③公務員時代からの不正な取引とその対象業務の撲滅そして④最後に一番困難な日本人に対する不信感への回復とそれに伴う労働争議の撲滅へと手を付けていくことにしました。
  • 人事制度の改変(学卒及びその卒業学科別による管理職昇格問題の差別改変)
  • 緩んでいる従業員の規範整備のための就業規則の改変と厳罰化
  • 不正な業務の識別対応のためのCEO 及び新CAOを中心とした組織(懲罰委員会)の創設
  • 日本側の役員、管理職、職員に対する不信感の払拭及び信頼感の回復
  • 労働組合対策(団体交渉)を落ち着いた状況にするための準備と冷静な対応のできる雰囲気作りの確立)
人事制度の改変
 組合員との打ち合わせなどにおいては、やはり日本の業務のやり方の押し付けと人事処遇について多くの不満が出ていたようでした。
 特に人事処遇については前CFOから話を聞いていましたが、彼は日本の昇格制度そのものを適応した程度であったようで組合員たちは全く納得していない様子でした。
 筆者は「何故!!!」と思い人事部に確認したところ、スリランカでは大学卒業であっても技術系と財務系以外はどんなに優秀であっても管理職に着けないシステムになっているようでした。
 考えてみたらN社や日本の公務員の世界でもキャリアー制度というものがあることを思い出しました。
 確かに、筆者は仕事の業績もないまま出世していく人も見ているし、本社採用と地方採用では同じ大学を同期で卒業してN社に入ってきてもその出世度合いが全く異なることも見てきました。
 N社出身の前CFOもCEOもこれが当たり前と考えていたのだろうと想像しました。筆者はN社以外から来た者であり、公務員の世界と民間の世界は人事処遇については異なることを知っていました。社員のやる気醸成を考慮し、このようなしがらみをなくすことを考え、CAOとしての権限でこのシステムをやめる事を提案しました。
 この件で人事部長を呼びこれまでの習慣的人事制度はやめて新たに能力による人事を前提とした制度とするように指示しました。
 本件はCEOにも筆者の考えを説明しました。彼もこの点に気が付かなかったようでしたが、筆者の考えを了解し実行することになりました。民営化のための改革というと、いつも労働組合からの抵抗が出てきていたようだが、本件については思ったほど抵抗もありませんでした。ただし、一部の管理職からの抵抗はありました。
 そこで、特に管理職については文書による評価のほかに、CEOとCAOによる面接が行われることになりました。
 この目的は会社の中枢の社員とのコミュニケーションを主な目的とし、極力TOPと話ができる場作りになればとの思いでした。本件は管理職組合からの不満もあまり出てこなかったので一安心でした。

就業規則の改変と厳格化
 本件はスリランカの現状を考え、さらなるセキュリティーの厳正化と同時に会社への入出管理のシステムそしてその保全管理の徹底を図るとともに、顔認証付き社員証明認証カードを首から掛ける方法をとりました。
 同時にコンサルタントを雇い社内規則を厳格にするため、総務部長を中心に就業規則を作成し、社員教育を人事部に指示し、その徹底を図るようにしました。
 そして、この施策を打ってそのまま社員任せとせず、半年ほど総務部を主体とした巡回班を作り、各電話局も含めその徹底のための運用体制を敷きました。その結果、例えば就業時間になっても食堂にて朝食を取っている者や社内を見知らぬ人がふらふらしている、日陰で寝ている、無断外出している者、書類配布をせずに放置している者等々多くの不正がこの巡回期間が終わるころには減少し、就業規則に示される内容が理解されその効果が出てきたように思えました。

不正業務対応の懲罰委員会創設
 CEOがこの委員会の委員長になり、少人数の秘密会議で行うこととし、必要都度CAOである筆者の要請で開催することにしました。
 実行部隊はCAOが代表として人事部長、そして外部からはCIA(chief Inspection Authority)とその配下、そして弁護士という構成としました。
 このように、社内的には調査の実行部隊は人事統括部長だけとし、その他はCIA等の外部人材としました。
 そして、この体制で、最も問題があると噂されている調達部長及び建設部門のODA案件入札にかかわる人達とその関係者の調査に入ることを指示しました。
 しかし、何があってもスリランカテレコムは未だ国が60%以上株を持つ会社であり、社員は元国家公務員であったわけですから、懲罰に関しても慎重に対応することが必要です。そのため、完全な証拠が必要であるのでその旨をCIAに伝え、調査を慎重かつ正確にやるように求めました。
 早速調査を開始し、CIAが動き出しました。
 調査を開始して一カ月ほどたって、第一回の報告会を本社の一室で委員が集まりその経過報告を聞きました。
 その報告を聞いて驚いたことには調達部長と各地方担当者が一緒になって会社購入品のほとんどにマージンを乗せてその差額を自分のところに入れていた証拠を持ってきました。それもかなり前からの行為であり、委員全員が唖然とするばかりでした。
 早速、CEOおよび弁護士も含めて打ち合わせを行いましたが、問題は「どのような懲罰とするか」と言った懲罰基準がないため、まずは罪の程度での懲戒処分のレベルを決めることを話し合いました。
 そこで委員である弁護士に、「世間一般企業でのこの種の問題での処分について調べてもらうことにしました。
 弁護士による懲戒に関する調査も終わり、数回委員会を開き調達関係での不正について幅広い調査結果もまとまり、慎重な審査の結果、調達部長を懲戒免職とし、新たに新しい調達部長を任命しました。
 もちろんこのことは、労働組合、特に管理職組合に事前にその結果も説明し納得してもらい処分を行いました。
 ところがこの処分の調査の過程で、新たに設備部長の不正が明らかになってきました。考えてみるとこの部は社内の備品、設備等々諸々の機材を業者から見積もりを取り発注する役務を担っている部門です。
 しかし、この部の扱う金額は調達部に比較し、それほど多くなく、あまり目立たないのでした。このことは、筆者が本社内の巡回で職場環境を見て回ったりしていた時、この設備部の不正に気が付きました。例えば、社内の環境を良くするため、冷房設備を本社全部に導入することを考え、設備部にその購入を依頼しました。その時の購入承認依頼が来た時に???と思いました。
 早速、本件についてもCIAに調査を依頼し、その結果と処置について委員会で検討しました。
 人事統括部長は懲戒免職を主張したが、過去にさかのぼっての調査でも調達部長ほどの悪質さはなかったので厳重注意としました。
 しかし、次のような事件も起きました。
 例えば、その厳重注意したその夜にこの設備部長の家に手りゅう弾が投げ込まれました。
 幸いにも屋根の上で爆発したので屋根が壊れただけで人には何の影響もありませんでしたが、その後の調査でもなぜ彼が狙われたのかわかりませんでした。
 一時は調達部長の罪に対して設備部長の処分が違いすぎるための腹いせではないかとの噂もありました。
 しかし、内戦が真っ盛りのスリランカでもあり、あまり周りもそれほど気にしないようで、そのままこの噂も自然に消えていきました。
 しかし、そのような余裕も吹き飛ぶような大きな事件が発生しました。
 この次は来月とします。

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