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偽善者
(編者:箕輪厚介+幻冬舎編集部、(株)幻冬舎、2025年12月10日発行、2刷、353ページ、1,900円+税)
デニマルさん : 4月号
今回紹介する本は、50年以上の親交がある友人から昨年末に贈呈されたものです。友人は千葉県居住で本書の出版に多少関係があった様ですが、ここで取り上げることを望んでいました。筆者は、その時期『ガウディの伝言』(2026年1月号掲載)の原稿を書いたので、「偽善者」なる本を読むのに多少の抵抗がありました。増してや原稿にするには問題があると思いお断りしていました。しかし贈呈された本書を読み終わって、神職者ガウディや著者の外尾悦郎氏とは対極にある「偽善者」も同じ人間です。色々と悩んだ結果、多様な本を取り上げるのも読書を楽しむことと割り切って、今回敢えて本書を取り上げますのでお付き合い下さい。さて本書の副題に「50歳の節目に、50人が語る“本当”の前澤友作」とあり、前澤氏に関係者した方々が多面的に評価したものです。ですから多少偏った忖度が感じられますが、多くは冷静な判断で前澤氏を語っています。それと後半に編集者とのインタビューが纏められていますが、その中で「自分は偽善者である」と語っています。本書から前澤氏が「偽善者」であるかどうかをご判断下さい。その参考に前澤氏が著名人となった実績等を含め経歴を調べてみました。前澤友作氏は、1975年(昭和50年)生まれで千葉県鎌ケ谷市の出身、現在は実業家で経営者であると資料にあります。学生時代はハードパンクのバンド活動をして、メジャーデビューを果たしたとあります。同時にカタログ通販もしていた。1998年に㈲スタート・トゥデイ(現在の(株)ZOZO)を設立。男性向けセレクトショップサイトを開設して企業をスタート。2004年にインターネットのセレクトショップを集積した「ZOZOTOWN」で「ZOZO」ブランドが人気を集めた。その結果10期連続の増収増益を果して、2012年に東京証券取引所の一部市場に上場の急成長を遂げている。2015年には月額10億円売上を突破して話題にもなった。2016年のアメリカ経済誌・フォーブスが発表した「日本の富豪50人」に選ばれていた。しかし、この頃をピークに徐々にブランドイメージが損なわれて会社は減益へ転落していった。2018年に(株)スタート・トゥデイは(株)ZOZOに社名を変更、2019年にはヤフー傘下に入り、社長を退任している。その結果、前澤氏は持ち株売却で、2400億円を手にしたと言われている。その後、(株)スタート・トゥデイを別会社として設立して社長に就任し、16社ものファンド会社の設立と災害支援活動等々を積極的に行っている。以上が前澤氏の企業活動の大まかな足跡です。本書出版の狙いについて編集者は「この本は、本人ではなく周囲の声を重ねることで前澤友作を描き出そうとした。忖度なくマイナス面や矛盾も含まれているが、その矛盾の中にこそ人間の面白さがある」と述べ読者への判断を委ねている。因みに本書の巻末でのインタビューで恋愛に関する質問に答えて「男として本能的でいたい半面、結婚して他の人に絶対目を向けませんとは言わないでおく(笑)。アートも皆でシェアしたいと思うけど、同時にこれを買ったのは俺だからっていう気持ちもある。だから“偽善者”なんです」と語っています。本書で紹介された関係者の証言は、成功者の美談だけではなく「失敗」「後悔」「人間としての本音」等々を隠さず赤裸々に書いています。筆者は、本書以外の語られざる面も追加して参考にしたいと思います。
知らざる一面(その1) どうして宇宙旅行
前澤氏の経歴から余り普通の人ではチャレンジ出来ないことを成し遂げた一面があります。それが宇宙旅行ではないでしょうか。少し分かる範囲で資料を追ってみたいと思います。2021年12月にカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から国際宇宙ステーション(ISS)に向けて宇宙に飛び立ち、日本の民間人でISSに滞在するのは初めての宇宙体験をしている。この宇宙旅行を体験するには、厳しいメディカルチェックと肉体的なトレーニングやフライトシュミレータによる実践訓練を受けて最終試験に合格しなければ実現されません。その全ての試験にパスした結果の宇宙旅行です。ISSに滞在したのは12日間で、その間にテレビ番組やユーチューブ等でもISSでの活動が配信され話題となり、12月20日無事に地球に帰還したと記録にあります。この宇宙旅行は、前澤氏が自費で参加されたので正確な費用は不明ですが、ツアー料金額は二桁億円とも推測されています。本書からは宇宙旅行の目的を探ることは出来ませんが、巻末の質問「宇宙まで行ったじゃないですか、もうやりたいこと残ってないんですか」に答えています。「世界は190カ国以上あるけど、俺が行ったのは70~80カ国。まだまだ行っていない国だらけだし、海だってそう。(中略)海中の世界も覗いてみたい。俺にとって『飽きる』のが一番怖い。だからまだまだやりたいことは山ほどある」という。50歳の前澤氏は何事も貪欲に夢を追い求めるチャレンジャーなのでしょうか。
知らざる一面(その2) どうして諸々コレクション
本書の巻末に前澤氏の人生年表があります。それと関係者の証言にも何か所も個人的な趣味も含めたコレクションのことが書かれてあります。その中でも特筆すべき点が絵画の蒐集に関するものです。以前から自宅やオフィスに飾られていた現代アートのコレクションがあったと紹介されています。その幾つかが大きな話題となっています。特に、2017年のニューヨーク・サザビーズのアートオークションでの「バスキア」(アメリカの現代作家、1960~1988)の絵画(無題1982年)を1億1千万㌦(約123億円)で落札しています。一方絵画コレクションについては、現代芸術振興財団を2012年に設立して、若手アーティストの支援や現代アートの普及にも努めているとあります。その他のコレクションでは、高級車(ロールス・ロイスやバガニー・ゾンダ等のスーパーカー)や高級家具や古美術品や骨董品までにも手を広げている様です。それぞれの分野での専門家をブレーンにして、コレクションの売買や資産管理をしているとあります。高級車コレクションだけでは終らずに、自身がオーナーとなってレーシングチームを作りレースに参戦し優勝を果たしたとあります。こうしたチャレンジについて「偽善的かもしれないが、多くの人に恩返ししていきたい」と巻末インタビューで締め括っています。以上からのご判断は読者に委ねられている様です。
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