例会部会
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『第308回例会』報告

木村 勝 : 12月号

【データ】
開催日: 2025年10月31日(金)
テーマ: 「 組織マネジメントにおけるリーダーのあり方 」
講師: 紙谷 昌弘 ( かみや まさひろ ) 氏
アグレックス株式会社 西日本クラウドソリューション部 マネージャー

◆ はじめに
日本では2020年頃から「働き方改革」として、従業員の幸福度向上を目的とした取り組みの一環として、ウェルビーイングが重視されるようになりました。
マネジメントとしての役割は、業務を遂行するだけでなく、一人ひとりが輝く共創の職場にすることも求められます。組織の心理的安全性を確保し、メンバーの強みを引き出し、成果、価値を最大化することは簡単ではありません。

そこで、今回の例会ではアグレックス株式会社 西日本クラウドソリューション部 マネージャーの紙谷昌弘氏を講師にお招きし、「組織マネジメントにおけるリーダーのあり方」と題し、体験談や事例などを交えながらご説明いただきました。
以下、要点を抜粋して紹介します。

◆ 講演内容
1. リーダーに求められているもの
世代ごとの仕事観には違いがあり、さらには悩みも多様化している。
不確実な時代に、自分らしい軸を持ち、安心しながら挑戦できる環境をどうつくるか?を考えるのは容易ではない。
また、リーダーに求められることも、「プロジェクトを管理して成果を出すこと」から「チームを活かし、未来に向けて価値を創ること」に変化している。

ノウハウ・スキルも重要だが、それだけではチームの信頼や創造性を最大化することは難しい。
本当に重要なのは、リーダーとしての「あり方」。

2. あり方の重要性
  1. ※ 多くの成功者を輩出する伝説のコーチ「マイケル・ボルダック」が考える成功の法則
        成功の80%は、心理面
        成功の20%は、方法論

あり方とは、人としての姿勢・ものごとの捉え方・存在の軸(どのような存在として生きるのか)、植物でいう根や、土壌のこと。

日本人は、「欠乏ベース」のあり方が多いが、学校教育は減点方式であることや、評価・偏差値ベースの就職活動、成果・安定を求める会社も背景にあり、自己肯定感が低いという心理的傾向から来ていると考えられる。
欠乏ベースと、豊かさベースの判断や、行動には違いがある。

自分に対して抱いているイメージ・自己評価・思考の枠、つまりはあり方から出てくる行動の支え、方向性を形づくるもの、セルフイメージを高めていくことが重要、植物でいう幹のこと。

あり方とセルフイメージによって4つのタイプに分類できるが、現代では「信頼調和タイプ」が必要だと考える。

  • 慎重探求(欠乏ベース×セルフイメージ低い)
  • 安心安全(豊かさベース×セルフイメージ低い)
  • 情熱チャレンジ(欠乏ベース×セルフイメージ高い)
  • 信頼調和(豊かさベース×セルフイメージ高い)

信頼調和タイプは、「本質を捉えた判断」、「本音を話しやすくなる」、「創造的な意見が出やすくなる」、「安定したパフォーマンス」、「信頼・協力を得やすくなる」などのメリットがあり、その結果「周りから信頼され、自分軸に沿って主体的に行動できる」となる。

3. あり方、セルフイメージの整え方
ニューロロジカルレベルでいう「自己認識、役割」であり、「ゴール(人生の目的、使命)」、「大切にしていること(信念・価値観)」と密接している。

次のステップで進めていく。
  1. ① 抽象度の高い、ワクワクを感じる未来のゴールを描き、ゴールから考えないと「諦め」「現状維持」が優先されやすい。

    制限なし、叶う保証なしで描く、条件よりも感情を中心に、現在形で語る
    右脳をフル活用!!

    最高の自分で生きる、自分らしく輝ける、喜びと感謝が循環する、人生の北極星みたいなもの。

  2. ② ゴールを具現化していく。
    服装、表情、声のトーン、周囲の空気、音、香り、温度、感覚まで細かくなど、ゴールを達成している未来の自分になりきる。
    8カテゴリに分けて、どうなっている自分がいるのかをそれぞれ想像してアウトプットする。
    未来ゴールが達成した理由をアウトプットする。
    Be(あり方)×Do(行動)=Have(結果)の法則は、自己実現や成功を達成するための考え方。

  3. ③ 行動と振り返り。
    未来の自分なら今日どんな一歩を取るか?
    振り返りは「気付き」や「学び」を得ることが目的で、内省してアウトプットすることがとても大切!
    行動⇔振り返りを循環させて小さな成功体験を積み上げ、自分自身の信頼が蓄積されていき、セルフイメージが向上。
    自分が目標を達成するための能力を持っていると信じる感覚、つまりは自己効力感の向上。

4. ネガティブマインドの扱い方
「偏桃体」という名の「危険振り分けセンサー」が自動で動き出す!
危険や喜びを感知して、体と記憶と行動を一気に切り替える役割。

ネガティブは敵じゃなく、未来からの応援メッセージと捉え、おかげ話に変換。
過去のネガティブは単なる幻想で、ネガティブなことを考えるきっかけがあった、なかった場合のそれぞれのメリットとデメリットをあげ、おかげ話をみつける!!

5. 組織としてリーダーに求められる行動
リーダーとして大切にしてほしいこと。
  1. ※ リーダー自身の未来ゴールを描き、あり方・セルフイメージを整え続けること
    自分と会社のありたい姿の重なりを見つける。
    自分のゴールが明確であり、あり方・セルフイメージが整っていると重なりが見つかりやすい。

  2. ※ 未来ゴールの視点で物事を考えること
    会社のMUSTとの向き合い方。
    個人の未来ゴールから見たら、MUSTは「通過点」「資源を得る場」と考え、ゴールとリンクさせることで、モチベーションを維持させる。

  3. ※ 配下メンバーに対して100%味方であること(勇気づけ:あなたはできる!)
    周りの環境はとても重要。
    周りが劣悪な環境だとすぐに現状に引き戻される。
    あり方・セルフイメージが整っていると、自然と相手を尊重し、共感できるようになり、怒りや不安も減っていく。

  4. ※ 相手に自分の価値観を押し付けないこと
    未来ゴールを軸とした小さな成功体験を積み重ねる。
    1 on 1 によりモチベーション維持し、心理的安全性の高い環境を作る。

6. 最後に
リーダーの役割
  • 部下全員を100%信じて見守る・応援する。
  • 「問題を指摘する人」から「本質を見抜いて信じる人」。

そのためにも、リーダー自身のありたい姿を伝えることも大切、部下の強み・価値観を引き出し、「ゴール」を共に描いていく。

最終的には決断(決めて絶つ)する勇気!!
未来ゴールを描き、自分を信じて行動しましょう!!

◆ 講演を聴き終えて
今回の講演では、講師の紙谷昌弘氏の体験談、実践事例をもとにした貴重なヒントをいただけました。

やり方ではなく、あり方の重要性と、それを整えるためのステップをわかりやすく、体験談を交えてお話いただいたことで、自身に置き換えた時のイメージが湧きました。
私はリーダーという役割を与えられていますが、私自身のありたい姿は伝えてきたと思っています。
今後は、部下の強み、価値観を引き出し、「ゴール」を共に描き、個人、チーム、組織として、未来に向けて価値を創り続けられるようになってきたいと思います。

例会を通じて、貴重なお話しをしていただけたことに、心より感謝を申し上げます。

当日参加された皆さま、何かヒントになることはありましたか。
例会では、今後もプログラムマネジャーや、プロジェクトマネージャーにとって有益な情報を提供してまいります。
引き続きご期待ください。

尚、我々と共に部会運営メンバーとなるKP(キーパーソン)を募集していますので、日本プロジェクトマネジメント協会までご連絡下さい。

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