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新米PM日誌~在宅勤務でのプロジェクトマネジメント~

小原 啓輔 [プロフィール] :11月号

0.はじめに
初めての投稿であるため筆者の経歴を少し紹介させていただくこと、ご容赦いただきたい。
私は、2015年にユーザー系SIerへ就職。2019年にITコンサルタント会社に転職後、2020年に現在の勤務先であるキリンビジネスシステム株式会社(以下「KBS」と称する。)に転職した。現在は開発プロジェクトでPM/PL業務を担当している。今回、筆者がコロナ禍で転職して苦労したこと、どう乗り越えマネジメントに活かしているかを紹介させていただく。また、PMに今後求められることもお話しさせていただく。諸先輩方からしたらまだまだ未熟者だが、新米PMの一意見としてご参考になれば嬉しい限りである。

1.コロナ禍当初はディスコミュニケーション!?(≒意思疎通が上手くできない状態)
 先の通り、私は2020年5月、コロナ禍の真っただ中でKBSへ転職した。出社が当たり前の環境で仕事をしてきたが、KBSではコロナ禍で完全在宅勤務が義務付けられていた。アイコンの写真しか見えない人が上司で、オンライン会議もリアルとは異なり話すタイミングわからない。職場の雰囲気がわからないまま、私は開発プロジェクトチームへアサインされた。そんなディスコミュニケーションな状況でKBSでの仕事が始まった。

2.周りからの期待と在宅勤務での生産性
 「新しい風を吹かせて欲しい」「KBSの当たり前でおかしいと思うことは発信してほしい」、中途採用で転職した方は必ず言われるフレーズだろう。確かに会社にとっては即戦力として採用しているし、外の情報など中々得られるものではないから期待するのが当然だ。ただ、今回はKBSの当たり前が全く見えなかった。
 もっとも、KBSのメンバーもコロナ禍の状況で新しい当たり前を探していた。急に在宅勤務となったことで働き方・コミュニケーションの変化に対応しようとしていた。模索している状況では、皆生産性が下がっているようだった。私も即戦力として期待に応えられていない、相談する相手もわからない中で仕事をするしかなかった。前向きな転職のはずが、本当に良かったのかと思うこともあった。

3.在宅勤務での活路を見出す
 在宅勤務に慣れ始めた頃、私は開発プロジェクトでPLを担当していた。しかし、ダイニングテーブルでの仕事は、以前の生産性には遠く及ばない。集中できる環境もなければ、質問も相手の予定表を確認しないといけない。そんな中だからこそ、自分だけでなく他の仲間も同じ状況であると考え、在宅勤務で凝り固まった重い腰をあげた。在宅勤務の利点は通勤時間をカットできることだ。時間があれば何か始められる。そこで私はコミュニケーション改善に取り組むことを決め、上司に相談した。二つ返事で了承をもらえたので、私は積極的に行動に移れた。
 在宅勤務でコミュニケーションが取れる場はオンライン会議しかない。それなら、会議でいかにコミュニケーションをとれるかが勝負だと考えた。第一の手は、「反応が欲しい場合は名前を呼ぶ」。今までは、相手の顔を見れば何が言いたいのかわかっていた。それができないなら、話してほしい人の名前を言うのが効率的で確実である。そして、第二の手は、「全員に話させる」。進捗報告は、PLがPMに連絡して終わる事が多かった。そうすると参加するだけの人が出てきてしまい、その人の時間が無駄になってしまう。私もいるだけの会議より発言した会議の方が他メンバーの報告内容も覚えているし、参加している意識も向上する。そこで、進捗確認はメンバーそれぞれに話させるようにした。この時も名前を呼び、ただ報告を聞くのではなく課題や不明点がないか言葉のキャッチボールを意識した。この時に大事なのは、相手の話を遮らないこと。報告が苦手なメンバーに話をさせるとどうしても詰まることがあるが、しっかり聞くことで考えを整理させる癖をつける。そうすると、段々と報告内容もまとまりが出てくるのだ。また、人に話させるだけでなく私自身も業務連絡ではあるがメンバーに話しかけることを意識するように努めた。通常よりも会議に時間をかけてしまう事になるが、会議の満足度は以前より高くなったと思う。
 また、ブレスト会議など対面でないと難しいと考えていた会議もオンラインホワイトボードを使うことで問題を解消できないかと考えた。社内で使っている人はいなかったので、空き時間で自らサービスを探してきてチームに提案してみた。元々何でもやってみようの精神だったからか、メンバーも新しいサービスに臆せず取り入れることができた。そのおかげで、意見出しなども対面と大差なくできるようになっていった。
 こうした活動を続けたのが功を奏したのか、メンバーへの確認や相談がしやすくなった。今まで経験してきたこと、仕事しやすかった先輩のやっていたことを積極的に真似する。当たり前だがこの状況で大事さが再認識できた。

4.会社の施策や制度も重要である
 ところで、会社や上司が何もしていなかったというわけではない。会社としても生産性の低下や進捗確認の方法に課題を感じていた。会社側のコミュニケーション改善施策としては、課長とメンバーでの「1on1ミーティング」を始めていた。短時間ではあるが全メンバーと1対1での会話を行うことでメンバー全員の状況を把握できるようになっていた。1on1ミーティングでは業務の課題だけでなく、マネジメントに関してや個人的な悩みまで話すことができた。先のコミュニケーション改善活動も、話しやすく挑戦しやすい雰囲気だからこそ実行できたと思う。結果、チーム全体として課題共有や検討も円滑になっていった。
 また、コロナ禍でユーザーと関わる機会が減り、業務知識を得られる機会もなかった。キリングループではグループ内で出向をすることが多々あり、私のチームリーダーもキリンビールからの出向者であった。システムユーザーであった人がチームにいることで、業務知識やユーザー独自の視点などコロナ前に対面で得られた情報をキャッチアップすることができた。このように、会社の施策や制度を活用することで状況を打破することはできる。今一度足元を見てみることも大事である。

5.これからのPMに求められること
 コロナ禍当初は利用ユーザーの業務を制限してまでシステムを安定化に努めていた。しかし、現在ではインフラ整備も終わり、通常の業務を行いながら在宅勤務を選択できるようになってきている。そのような中で、ITに求められるのはユーザーや企業の業務を拡大・発展させていくことだ。PMにはITによる付加価値・価値創造の提案が求められるようになる。少なくともKBSは、キリングループへのITソリューション提案を期待されている。価値提案は、今までのSE業務から一歩踏み込んだ内容であるため難しく思う方も多いだろう。
 しかし、以下のポイントを意識できれば事業からの期待に応える事が出来ると考える。①事業に対して熱意をもって考えて深く理解すること②多様な考え・意見を柔軟に受け入れること③常にアンテナを張って先を見据えること④周りを巻き込んで挑戦すること⑤スピード感をもって取り組むこと⑥関係者に対して誠実であること⑦自分自身が楽しむことである。つまり、これらを身に着けたPMが業界問わず今後求められるだろう。
 最後に、筆者自身PMとしての経験は浅く、勉強ばかりの日々である。早く一人前のPMとなれるよう精進していきたい。

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