北海道P2M研究部会
次号

北海道PMセミナー開催の報告について

北海道P2M研究部会 代表 宮崎 雅年 [プロフィール] :8月号

1. はじめに
 2019年7月12日に札幌で北海道PMセミナーを開催し、「次代へつなげるプロジェクトマネジメント」というテーマのもと5つの講演に対して53名の参加をいただきました。
 参加者の内訳は、参加申込者37名、講演講師5名、招待参加者5名、PMAJスタッフ4名、北海道新聞社取材者2名です。
 2002年にPMAJ(日本プロジェクトマネジメント協会)の前身であるPMCC(プロジェクトマネジメント資格認定センター)が設立され、全国でPMS(プロジェクト・マネジメント・スペシャリスト)の資格認定試験が実施されて以来、北海道にもPMSの資格認定者が誕生しました。
 私は2003年にPMSの資格認定を受けました。
 その後、北海道においてもPMSの資格認定者を組織化しようという動きはありましたが、なかなか継続的な活動に至りませんでした。
 今回、本部の支援もあって北海道P2M研究部会を組織し、北海道PMセミナーの開催にこぎつけたことは感慨深いものがあります。
 今年は元号が平成から令和に変わったことから、「次代へつなげるプロジェクトマネジメント」とテーマを設定いたしました。
 また、PMAJの理事長が7月1日付けで光藤 昭男 様から加藤 亨 様に交代し、新しい理事長の下で最初に開催するセミナーが北海道であることを大変にうれしく思います。

2. 広報活動
 北海道で初のPMセミナー開催に当たり、本部の支援はもとより、地元でどのように広報活動を行って参加者を集めるのかが課題でした。
 経済産業省 北海道経済産業局様、一般社団法人エンジニアリング協会様、特定非営利活動法人ITコーディネータ協会様の後援、北海道ITコーディネータ協議会様、パナソニックソリューションテクノロジー株式会社様の協賛のもと、北海道ITコーディネータ協議会の総会および特定非営利活動法人日本システム監査人協会北海道支部の月例研究会でのチラシ配布、コワーキングスペースへのポスター展示、地方独立行政法人北海道立総合研究機構様および一般社団法人さっぽろ産業振興財団様をご招待するなど広く広報活動を行いました。

3. 講演概要
 以下に5つの後援の概要を紹介いたします。

3-1. 基調講演「実践するIoT」
~自分のためのSociety 5.0~
   講師は、北海道大学 産学・地域協働推進機構 先進ITプロトタイプ研究部門 特任教授 山本 強 様です。
 IoTやビッグデータが産業や生活を変えると言われて久しく時が経過しています。コンセプトとしての第4次産業革命、超スマート社会の「絵」は描かれましたが、その社会実装はまだ見えていません。その一方、IoTを実現する要素技術は急速に低価格化しており、サービスが企画できれば実現する手段は簡単に手に入るようになっています。自分が必要なら、IoTサービスは作れるのです。この講演では大所高所から論じるだけでなく、自分の暮らしや遊びの中でIoTを実際に使ってみることを提案しています。理屈ではわかっていても、実際に現場にIoTシステムを持ち込むことで見えてくる技術的な課題や、意外な効果が見えてきます。
 特に、昨年9月6日未明に発生した北海道のブラックアウト、日常の商用電源の周波数変化の実測データは、次の講演のイントロダクションとして興味のある内容でした。

3-2. 講演1 「コンセントの向こう側」
~電気はどのように届けられるのか~
   講師は、北海道電力株式会社 内部監査室の私です。
 スマートフォンなどITは日常生活に深く入り込んでいますが、電気がなければITの利用に大きな支障となります。
 電気の購入先を選択することが可能になった現在、電気に対する関心は高まっておりますが、電気の供給に関する実態はほとんど知る機会がございません。
 地域独占から電力自由化への移行、全国の電力系統、昨年発生したブラックアウトとその復旧など、電力会社に勤務する講師が、公開資料を基に私人として講演しました。
 特に、安定した電圧と周波数の電気をお客さまにお届けするために、電力会社が行っていることはプロジェクトマネジメントの連続であるということをお伝えできたのではないかと思います。

3-3. 講演2 「藤女子大学だからできるプロマネとはなにか」
~身近なマネジメントと創造性~
   講師は、藤女子大学 人間生活学部 人間生活学科 プロジェクトマネジメント専修 教授 伊井 義人 様です。
 藤女子大学人間生活学科では2018年度からプロジェクトマネジメント専修を開設しています。1年生は学科の必修科目として、2年生からは専門分野としてプロジェクトマネジメントの基礎を、学外実習や座学で学んでいる。10代後半から20代前半の女性がプロジェクトマネジメントを学ぶ意義とは何か。日常生活に密着し、創造性を加味したプロジェクトマネジメントのスキル学習のための取組みと藤女子大学が模索している現状を紹介します。
 特に、女性に限らず、大学においてプロジェクトマネジメントに関する知識を体系的に学ぶ機会を得ることは、その後の人生において大きなポテンシャルとなることは想像できますが、当人がそのポテンシャルを実感するのはある程度の経験を必要とすることが、教える側の悩みとして伝わってきました。

3-4. 招待講演 「小惑星探査機「はやぶさ2」立ち上げの裏話」
~プロジェクトマネジメントの観点から~
   講師は、宇宙航空研究開発機構 チーフエンジニアリング室 客員 PMAJ・PMマスター 長谷川 義幸 様です。
 「はやぶさ2」は、今小惑星リュウグウで探査を行っており、マスコミでも話題になっている。このプロジェクトは、「はやぶさ」が地球帰還する前から始動した。リュウグウへの打ち上げは、地球と小惑星の公転のための位置関係で打ち上げるタイミングが限定される。当初はプロジェクト予算がつかなかったし、予算がついても2度にわたり大幅に引き下げられる憂き目にあっている。プロジェクトの立ち上げを如何に工夫したかを紹介しました。
 特に、プロジェクトを進める上で、技術者と科学者の間の葛藤とその解消に苦労したということは、大変に示唆に富む事柄であった。
 また、セミナー前日の2019年7月11日に「はやぶさ2」がリュウグウへ2回目のタッチダウンを行ってサンプル採取を行ったことから、タイムリーな内容の講演であり、地元を代表する地方紙の北海道新聞社の取材があって翌日の朝刊に掲載されたことからも話題性のある講演であった。

3-5. 講演3 「マネジメントシステムの活用とその展開」
~企業ウェブサイトのマネジメント事例からデザイン教育への活用について~
   講師は、札幌市立大学 デザイン学部 教授 安齋 利典 様です。
 企業のウェブサイトは正確な企業情報と最新の製品/サービス情報をステークホルダーに伝え、会員制サイトの個人情報等も抱える企業の顔である。その裏側は、サーバのプロジェクトマネジメントを始めとする複数のマネジメントシステムから成る統合サイトマネジメントにより支えられている。大規模企業ウェブサイトのマネジメントの事例と、そのノウハウを元にしたデザイン教育の現場について報告しました。
 特に、プロジェクトマネジメントについて深い知識を持たない学生に対してWBSの作成を経験させるための工夫は、WBSとして何を表さなくてはならないのか、改めて考える良い機会であった。

4. 今後の展望
 盛会に終えることができた今回の北海道PMセミナーですが、参加していただいた方々に北海道P2M研究部会を忘れさせないような活動を継続していきたいと考えております。
 また、今回新たに知り合うことができた方々と継続して繋がる手段・方法を模索しながら、北海道P2M研究部会が組織として活動できる仕組みを構築していきたい。

以上

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