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成功するプロジェクトの特徴

増田 英祐 [プロフィール] :9月号

 巷ではよく失敗するプロジェクトについては話題になるが、あまり成功するプロジェクトについては話題に上がらない。私自身、10年以上にわたり、情報システム業界にSier、SEとして携ってきたが、あまりプロジェクトの成功にフォーカスが当たっているのを見たことがない。成功するプロジェクト自体が少ないので、話題にすらならない(できない)のかもしれないが、大抵のプロジェクトは失敗に終わってしまうと嘆く割に、そもそも「プロジェクトが成功する」とは、どういった状態を指しているのかイメージできている人は少ないのではないだろうか。
 私が思うところの成功するプロジェクトの特徴を幾つか列挙してみた。あくまで仮説ではあるが、あなたが所属する組織においても、当てはまるプロジェクトはあるのではないだろうか。

目立たない(数字上、目立たない)
チーム内のコミュニケーションが円滑である
製品・サービスのリリース後、特筆するトラブルがない
リスケを厭わない、また変更に柔軟性や意図がある

 特に1点目の”目立たない” というのは、成功するプロジェクトの最大の特徴ではないかと考える。たとえば、年間売上高が数百億円規模で、プロジェクト利益達成率30%を標榜している事業会社があったとしよう。期間7か月、売上600万、粗利益200万弱を達成したプロジェクトと期間3年、売上4.5億で粗利が出せるのかも不明な赤字体のプロジェクトを比較する場合、経営層はどちらに関心を持つだろうか。悲しいかな、後者である。金額が大きい=影響が大きいため、自分の責任が問われかねないプロジェクトには目を光らせるが、そうではないプロジェクトには関心すら示さないのだろう。ただし、売上や人数等の規模の大小で、プロジェクトの成功要因が異なる訳ではない。この当然の事実が、あまり認識されていないのではないだろうか。

 2点目にコミュニケーションのことを持ち出してみた。よくあるパターンの観点ではあるが、ここでいう”コミュニケーションが円滑である”というのは、無駄に長い会話・メールや意味のない会議が少ないという意味である。相手の言っている説明や意図がよく分からないことがあり、何度も聞き返し、確認することが往々にしてあるのではないだろうか。そのこと自体、悪いことだとは思わないが、最少時間で済ませ、次に進めているだろうか。ここが盲点となると、無駄な説教ばかりが横行していたり、会議のための会議を無駄に開いたりと、生産性のないことにパワーを割いてしまうことになる。

 3点目のトラブルについて。そもそもプロジェクト自体が目立たないので、トラブル自体も目立たないのかもしれないが、往々にしてプロジェクトが成功していると、不思議とこのトラブルも注目されない。断言できることは、トラブルのないプロジェクトはない。ただトラブルが発生しても対処や解決までが早く、もしくは顧客と事前合意済みの形で、トラブルが発生しても未然に防いだことになっているプロジェクトを見たことがある。こうなってくるとトラブルもトラブルで無くなってしまうが、なんせトラブルらしいトラブルがない。

 最後に、”リスケを厭わない”と書いたが、計画を見直せるプロジェクトは実に少ない。大体、日常生活においても初回に立てた計画のまま達成できることの方が少ないのに、プロジェクトのレベルで、なぜリスケしないのか不思議でならないが、計画を変更せず固執して進めているプロジェクトリーダは多い。一方で柔軟に変更や訂正を行い、常に改善しながら進めているプロジェクトは、チームメンバと顧客が一体となっているケースが多い。おそらく顧客と合意を形成しながら地道に対応しているため、顧客との距離が近くなっているとも考えられる。

 上記のようなプロジェクトが成功する状態の特徴は何かを考えてみると、自ずと何をすればいいのか見えてくるのかもしれない。とにかく、以前に通用したやり方は次のプロジェクトで通用するとは限らない。そこがプロジェクトの面白いところでもあるが、あなたが携わり、マネジメントするプロジェクトを円滑に進めたければ、一度、自身が所属する組織の中で目立たないが、成功しているプロジェクトの中からヒントを得てみてはどうだろうか。

-以上-

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