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マインドフルネス瞑想の効用

竹腰 重徳 [プロフィール] :10月号

 マインドフルネス瞑想の普及に最も貢献した研究者の一人であり、この分野の第一人者であるマサチューセッツ大学医学校教授のジョン・カバットジン博士は、マインドフルネス瞑想を「意図的に、今この瞬間に、評価や判断とは無縁の形で注意を払うこと」と定義しています。そして、「私たちが知らなければならないのは、誰もが持っているかけがえのない今という瞬間だけを、知覚し、学び、行動し、変え、癒さなければなりません。だからこそ「瞬間瞬間を意識する」ことがとても大切なのです。瞬間をより意識できるようにする方法は、瞑想トレーニングを通じて学んでいくことです」と述べています (1)
 マインドフルネス瞑想は、仏教の瞑想がルーツですが、宗教性を取り除き、宗教と関係なく誰でも取り組めます。科学的な研究が進むにつれ、マインドフルネス瞑想は、心身の病気の人を癒すだけでなく、一般の人たちの心の健康や能力開発についても効果があることが実証されてきました。そしてだんだんと教育や福祉といった分野、そしてビジネス分野への導入が始まってきました。特に2000年以降、経営学、リーダーシップ論、人材開発など、多種多様な分野にマインドフルネス瞑想が取り入られるようになりました。マインドフルネス瞑想には、多くの効用が実証されています。
気づきと集中力が高まる
ストレスが軽減され、心が穏やかになる
EQ(感情知性)が高まり、心が安定する
頭が明晰になり、洞察力が高まる
創造性が高まる
思いやりの気持ちが育ち、チームワークが向上する
リーダーシップ能力が高まる
 ハーバード大学、スタンフォード大学などの研究者によって、実証研究が行われ、脳との関係性なども科学的に証明されるようになりました。また、グーグル、インテル、IBM、P&G、マッキンゼー、BASFなど欧米企業では、次々と社員研修にマインドフルネス瞑想を取り入れるようになりました (2)  (3)
 マインドフルネス瞑想は、「今この瞬間」、自分の内側で起こっていることに100%注意を集中させて観察し続けるための、いわば脳や心のトレーニングです。このトレーニングを続けることで、とてもリラックスしているのに、感覚は鋭くなり、それまでふりまわされていた漠然とした不安感などとは、無縁の安定した自分になることができます。瞑想は難しいイメージがありますが、やることはシンプルで、誰でもすぐに実践できます。基本的には、姿勢を正して、ただ自分のしている「呼吸」に意識を向けるだけで、意識が呼吸からずれたことに気がついたら、注意を呼吸に引き戻していきます。ただ、この作業を繰り返すだけです。実践してみましょう (1)
1. まず、椅子に座り、背筋をまっすぐ伸ばし、肩の力を抜いてリラックスしましょう。
2. 軽く目を閉じましょう。
3. 息を吸い込んだときは静かにふくらみ、息を吐いたときは引っ込むのを感じながら、腹部に注意を向けましょう。
4. まるで自分の呼吸の波乗りをしているように、息を吸い込んでいる間も息を吐き出している間も、呼吸のすべての瞬間に注意を集中しましょう。
5. 自分の心が呼吸から離れたことに気づいたら、その度に呼吸からそらしたものは何かを確認してから、呼吸に注意を戻しましょう。心が呼吸から離れて他のことを考えるたびに、呼吸に注意を引き戻すのがあなたの仕事です。
6. このトレーニングを毎日都合の良い時間に15分間以上行いましょう。
7. トレーニングを続けることにより、誰もが「今、この瞬間」に注目することができるようになります。
 呼吸は、人間のすべての活動において行われる基礎となる行動です。普段あまり意識することはないかもしれませんが、緊張した時に深呼吸するだけで、だいぶ落ち着いたといった経験を持っているのではないでしょうか。呼吸を通じて「今この瞬間」に注目するトレーニングを毎日行うことで、自分自身の「今、この瞬間」での行動や判断に対しても、注意が向けやすくなり、気づきや集中力も高まってきます。

以上

参考資料
(1) ジョン.カバットジン、マインドフルネスストレス逓減法、北大路書房、2007
(2) サンガ編集部、グーグルのマインドフルネス革命、シナノ、2015
(3) スティーブン・マーフィ重松、スタンフォード大学マインドフルネス教室、講談社、2016

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