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プロジェクト開始の3つの基準

プラネット株式会社 中嶋 秀隆 [プロフィール] :5月号

 ここ10数年、大学の理工学部で4年生に向けた講義をしているが、今年は就職活動の真っ只中にあたる。就職活動中の学生から、会社を選ぶ基準についてアドバイスを求められることがある。その際は、プロジェクトマネジメントの知見にもとづいて答える。
 企業がプロジェクトに著手するきっかけには、一般に、市場での需要、戦略的機会やビジネス・ニーズ、社会的ニーズ、環境への配慮、顧客の要請、技術的進歩、法的要件などがあげられる(PMBOK® ガイド第5版)。米国のガラス産業のリーダーであるコーニング・グラスでは、プロジェクトに著手する判断を、さらに絞り込んでいる。すなわち、「市場はあるか? 勝てるか? 意味はあるか?」の3つだ。
 これを就職活動に当てはめると、次のように解釈できる。
1. 市場はあるか? (Is there a market? )
 その昔、わが国では洗濯をするのに洗濯板を使っていたが、今では電気洗濯機を使う。自分が選択板に強い愛着を持つとしても、それを市場に提供してビジネスを成り立たせることはできない。就職活動では、将来の市場成長を読む目を持ちたい。
2. 勝てるか? (Can we win? )
 ビジネスは競争で成り立つ。競争に勝たなければ生き残ることはできない。その意味で、職業選択も自分の強みを生かせるものにしたい。突き詰めると、得意で好きことを仕事にしようということだ。得意なことで力を発揮すれば、会社や社会に貢献できる。そして、好きなことに集中すれば、いくらやっても疲れず、創意工夫の伸びしろがある。
3. 意味はあるか? (Is it worth it?)
 仕事は人生の一番いい時間を割いて行うものだ。教育を終えてから、退職するまでで、およそ40年ほどだ。しかも毎日、朝から夕方までの、生産性の高い時間帯をついやす。だからこそ、やり甲斐を感じられることが重要だ。脱法ドラッグの販売や振り込め詐欺など、儲かりさえすれば何でもよいというのでは、意味がない。
 プロジェクトの知見は、就職活動にも十分に役立つものと思う。

以 上

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