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プロジェクトマネジャーと戦略知識(読書歴調査) 1)


 日本企業では、技術者などの専門的職種の経験だけの人物を管理職として登用することがごく一般的に行われる。その場合、経営や戦略に関する基礎知識も不十分なまま、事業経営に当たっていることが危惧される。付図1と付表1、2は筆者が行ったアンケート調査の概要である。アンケートは、経営や戦略に関する実務的な参考図書(研究者向けの専門書ではない、俗受けのするハウツー的な内容ではない、経営者個人の評伝の類ではないもの)17件について、読了したか、多少なりとも読んだことがあるかを尋ねたものである。対象者数は150名で、40歳代以上で職位はプロジェクトマネジャー、一般のマネジャー・経営者が中心である。驚いたことに、こうした職位層であっても、75%が1冊以下であった。面白いことに、同時に調査した「もしも高校野球の女子マネジャーがドラッカーを読んだら(通称「もしドラ」)」については40%を超える人が読んでいた。この調査だけで、断定できないにしても、技術者等から昇格したマネジャー・経営者は、マネジメント関係の知識の必要性は感じつつも、体系的学習(経営論、事業戦略論、組織論など)をする習慣が非常に弱いと推測できる。日本の産業界の弱点であろう。こうした理由から、P2Mガイドブックでは、戦略について多少丁寧な概説(第4部序章など)を行っている。なお、この調査の対照群として、経営戦略論の研究者や強い関心を持つ経営・経済系16名を比較対照群として同一の調査を行った所63%が7冊以上、25%が11冊以上読んでいるという結果であった。

付図1 技術系マネジャーの戦略知識(読書歴調査1)
付図1 技術系マネジャーの戦略知識(読書歴調査1)

付表1 戦略に関する読書歴の調査
付表1 戦略に関する読書歴の調査

付表2 読書調査対象図書リスト
付表2 読書調査対象図書リスト


1 ) 清水基夫「プロジェクト & プログラムマネジメントの体系と実践」国際経営戦略研究学会にて口頭発表(2011年9月)、
日本工業大学大学院編「中小企業技術経営実践講座Ⅱ」白桃書房(2015.05)pp21-23 所収

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