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「ガルシアへの手紙」の意味

プラネット株式会社 中嶋 秀隆 [プロフィール] :11月号

 駆け出しのビジネスパーソンであった頃、研修で「ガルシアへの手紙」 (エルバート・ハバード) という文章に接して、チンプンカンプンだったことがある。仕事の基本もプロジェクトマネジメントの手法も、まだ知らなかったときのことだ。
 ローワンという男が困難きわまる指示を受け、依頼者を一切わずらわせずにやりとげた・・・という 3 ページほどの短い文章だ。
 ここまでのビジネス経験とプロジェクトマネジメント知見をもとに、「ガルシアへの手紙」を再読すると、ローワンの思考をある程度、たどることができるように思う。
 すなわち、初期段階で、目標・指令をはっきり受ける。自ら情報を収集し、ガルシアの所在を推理する。ルートと代替案、スケジュールを複数考える。リスクを計画する・・・などだ。
 さらに、実行段階では、まず、不確実な状況を引き受け、勇気をもって動き出す。健康・睡眠・体力を維持する。迷ったときは、冷静に考え、成功確率の高い代替案を採用する。責任感をもってことに当たる。決してあきらめない・・・など。
 その結果、困難きわまる指示を実現し、達成感を味わい、自信を深めたにちがいない。
 その冒頭を以下に引いておこう。興味ある方は、ネットで全文をお読みください。

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 キューバ戦争のからみで、私の記憶の中に、まるで、火星が大接近してきた時のように、最もはっきりと思いだす人物がいる。アメリカとスペインとの間で、キューバをめぐって戦争が起きた時、合衆国は、どうしても、すぐに反乱軍のリーダーと連絡をとらなくてはならなかった。そのリーダーの名はガルシアという。
 
 キューバの山奥の要塞にいるらしいが、どこかは誰も知らない。郵便も電報も届かない。しかし、大統領はガルシア将軍の協力を取りつけなくてはならない。そして、それは、至急を要する。「どうすればいい!」誰かが大統領にこう言った。「ガルシアを見つけ出せる人間がいるとしたら、それは、ローワンという名の男です」ローワンが呼ばれた。そして、大統領からガルシアへの手紙を受け取った。私は、ローワンという名の男が、どのようにガルシアへの手紙を受け取り、それを防水の小袋に密封し、胸に革ひもでしばりつけ、四日後の夜に小舟でキューバの海岸に上陸し、ジャングルの中に消え、敵地を歩いて横断し、ガルシアに手紙を渡し、三週間後に別の海岸に現れた。私はその顛末を詳しく語ろうとは思わない。ただ、言いたいのは、次のことだ。
 
 マッキンレー大統領がローワンにガルシアへの手紙を渡したが、そのときローワンは、その手紙を黙って受け取り、「ガルシアはどこにいるのですか」などと聞かなかったということである。この男こそ、ブロンズで型にとり、その銅像を永遠に国中の学校に置くべきである!
 
 若い人たちに必要なのは、学校における机の上の勉強でもなく、あれこれの細かな教えでもない。ローワンのように背骨をピシッと伸ばすことである。自らの力で物事に取り組もうという精神を教えることである。勇気を教えてやることである。そうすれば、若い人たちは、信頼にそれこそ忠実に応えられる人物、すぐ行動に移せる人物、精神を集中できる人となり、そしてガルシアに手紙を届ける人となれるであろう。 (以下略)

以上

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