投稿コーナー

これってプロジェクト?

プラネット株式会社 中西 全二 [プロフィール] :11月号

【その1】
 私は以前に、虫歯が痛くなり、虫歯治療をしたことがある。
その「虫歯治療プロジェクト」の話である。

不思議な話だが、このプロジェクトは納期が明確に定まっていない。
医師から今回はどのような作業をするのか、次回はどのような作業をするのか明確な説明はなく、またゴールも明示されていない。
ある時点で、すでに虫歯自体の治療は終わったらしいが、まだ医師から完了サインはでていなかった。
私はひたすらスケジュールを調整し、せっせと病院に通った。

あるとき、仕事先でこの話をすると、「中西さん、それは保守作業ですね」と言われた。目からうろこであった。
私が「虫歯治療プロジェクト」だと認識していたことは、実は「歯全体の保守作業」であったのだ!

このプロジェクトを通して、私はいろいろな教訓を得ている。

<1> 本来のプロジェクトオーナーである私が、相手任せにすると、
 このような状況になってしまうこと

<2> プロジェクトマネージャは、オーナーに明確に説明責任を
 果たさないと、オーナーは不安になってしまうこと

<3> オーナーがプロジェクトを実施する本質を理解できていないこともあること
   今回の事例は、オーナーは「虫歯治療」だと思っていたが、
   プロジェクトマネージャは「歯全体の保守」を行っていた。

そうだ、今度、その歯医者にPMBOK®ガイド をプレゼントしなくては・・・

注: PMBOK®ガイド における「プロジェクトの定義」からみると、
今回の話は虫歯治療プロジェクトと名付けてはいけないのである。
なぜならば、独自性はあるが、有期性はなく、QCDの概念もないからである。

【その2】

ある日、歯科医から虫歯治療のオプションを提示された。
<1> 保険適用の範囲内の材質を使用し対応する
<2> 保険適用外の金属材質を使用し対応する
<3> 保険適用外のセラミックを使用し対応する
そして、それぞれのコストおよびメリデメを説明された。

最終的には、自己責任で患者である私が判断した。
プロジェクトの進め方としては、申し分ないと思う。

但し、オプションを自己責任で選択できない患者の場合は、困ってしまうだろう。
場合によっては、「おすすめプランの提示」が必要かもしれない。
ステークホルダーは「自分のやりたいこと」を完全に理解しているとはかぎらないので・・・

プロマネは、「アドバイザー」でもなければならない。
もちろん、お客様の立場で!

蛇足:
 私の主治医は優秀なプロマネである。
 品質重視でもないし、コスト重視でもないし、納期重視でもない。
 あくまでもフラットに、顧客である私に優先順位を選ばせた。
 私は品質を優先した。

(「PMBOK」は、Project Management Institute, Inc.(PMI)の登録商標です。)

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