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幸運・不運と対応の良し悪し

プラネット株式会社 中嶋 秀隆 [プロフィール] :7月号

 どの会社も、いくつかの幸運に恵まれ、いくつかの不運に見舞われる。そして、その対応の良し悪しによって、そこから発展を遂げる会社とうまくいかない会社に分かれる。幸運に恵まれた会社が良い対応をすれば大きく発展するが、対応が良くないと、せっかくのチャンスをモノにできない。たとえ不運の見舞われた会社でも、良い対応をすれば向上に結びつけられるが、対応がまずいと致命傷を負う。
 同じ業界内の企業比較をしたで『ビジョナリーカンパニー④』(J.コリンズ他)には、複数のペアで、幸運・不運と対応の良し悪しを比べている。一例として、インテルとAMDと対応の違いを見てみよう。
 インテルの幸運のひとつに、IBMが自社製パソコンのマイクロプロセッサーとしてインテル製を採用したことがあげられる。ここでのインテルの対応のよさが、その後の成長を方向づけた。その時期に、そのインテルの主力商品「ペンティアム」にバグがあることが大々的に報じられた。これは、インテルの独占状態に風穴を開けることをめざしていたAMDには、またとない幸運であった。しかし、AMDは対抗機種「K5」の開発を予定通りに完了できず、5ヶ月遅らせてしまった。その間に、インテルは次の第6世代マイクロプロセッサーに移行し、AMDは再びレースから脱落した。
 これを図にまとめると、次のように表すことができる。

逆境をバネに発展
(- +)

チャンスに大きく発展
(+ +)

停滞
(- -)
せっかくのチャンスを
モノにできない
(+ -)

 ちなみに、インテル A.グローブ社長(当時)は、次のような談話を発表している。「良くない会社は危機で破壊されるが、良い会社は生き残る。偉大な会社は危機により向上する」
 個人が生きていく上でも、誰もがいくつかの幸運に恵まれ、いくつかの不運に見舞われる。そして、その対応の良し悪しで、大きく伸びる人とうまくいかない人に分かれる。
 落語の「芝浜」はこの辺りのことを浮き彫りにしたストーリーだ。思わぬ幸運に恵まれた魚屋が、まずい対応をしかかる。上の図の「せっかくのチャンスをモノにできない」行動をとろうとした。にもかかわらず、女房の機転により良い対応をし、その結果、「チャンスに大きく発展」したのである。そのあらすじを紹介しよう。

 魚屋がある日、海の中から大金の入った財布を拾う。大喜びで帰宅し、大酒を飲んだ。朝起きると飲み過ぎで記憶をなくしている。女房に財布の事を尋ねると、「何を言ってるの? 夢でもみたんじゃないの?それよりさぼっていた仕事を真面目にやってくれ」と言われる始末だ。魚屋は発心して、酒を止め、商売に精を出し、成功する。数年後の大晦日の晩に、女房が財布を拾ったのは事実だったと打ち明ける。財布の横領で打ち首の罪に問われるのを恐れ、内緒で大家に相談し役所へ届けたのが、時効になったのだ。その時に女房が「よくまじめに働いてくれた。まあ今夜ぐらいは一杯どうか」と酒を勧める。魚屋はそれを飲みかけるが、飲むのを止めて言う。「いけねえ、ここで飲んだら、また夢になっちまう」

以上

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