PMプロの知恵コーナー
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アジャイルプロジェクトマネジャー

竹腰 重徳 [プロフィール] 
  Email : こちら :9月号

 アジャイルは、変化する顧客の要求を迅速に実現するために、開発チームと顧客との協調によって実施される漸進的反復開発手法です。顧客価値をあげる変更は歓迎し、顧客の要求に合った高品質の製品を迅速に開発することが可能となります。計画よりも顧客価値実現を重視した考え方が根底にあり、スピード感を持って顧客の要求を実現します。激変する不確定のビジネス環境の中では、イノベーションが要求され、アジャイルは、必須のツールとなってきました。

 ウォーターフォールでは、顧客の要求は時間をかければ事前に詳細は決めることができることを前提に、要求(スコープ)をしっかりと固めてリソースと期間を見積もるというやり方で詳細なプロジェクト計画を立てそれに従って実行します。プロジェクトマネジャー(PM)は、顧客の要求変更を厳しく管理し、開発チームに対してプロジェクト計画に従って作業するよう一人一人に指示命令管理してQCD目標を達成します。

 一方、アジャイルでは、顧客の要求は事前にはすべてを詳細に固めることは難しいし、変わるという前提に立ち、リソースと期間を固定させたうえで、優先順位の高い要求から漸進的に反復を繰り返して顧客価値の実現を図ります。顧客価値をあげる要求変更は歓迎するため、要求に優先順位を付け、決められた固定期間が終了したら、残った優先順位の低い要求の開発はしないという方法でスコープクリープを防ぎます。また、アジャイルでは、PMが開発チームを管理する方法を取らず、人間性尊重を重視し、開発の責任をチームに委譲する方法を取り、チームが自己組織的チームとして成果をあげるよう支援します。人間は、上から指示管理されて仕事をするより、任されてやる方が創造性を発揮し、要求変更に迅速かつ柔軟に対応し、楽しんで仕事ができ、生産性が上がるからです。つまり、アジャイルPM(スクラムではスクラムマスター)は、開発チームが自律的に創意工夫をして仕事ができるよう支援に徹するのです。

 アジャイルPMは、アジャイルプロセスの遂行責任を持ち、具体的に開発チームに対して下記のような事を実行して役割を果たします。
アジャイル価値観や原則の理解とプラクティスの実践支援をする
開発チームが自己組織的チームになるよう育成指導する
効果的なコミュニケーションの促進をする
開発チームのモチベーションアップをはかる
開発チームの進捗を妨げる障害を除去する
アジャイルミーティングのファシリテーションを行う
チーム内のコンフリクトマネジメント支援をする
開発プロセスのツールやプラクティスを改善する
チームの生産性向上を支援する
 一方、アジャイルPMが、開発チームに対してウォーターフォールで行っていたような下記のような行動をとるとアジャイルはうまく機能しないのです。
開発チームに指示管理する
開発チームにタスクを割り当てる
開発チームの決定を覆す
開発チームに代わって決定する
プロダクト戦略や技術的な決定を指示する
開発チームの目標設定に圧力をかける
 アジャイルPMは、開発チームが自ら責任を果たすよう、助言者、支援者の役になるのです。したがってウォーターフォールPMからアジャイルPMになるときは、役割が大きく変わりますので、役割の違いを十分認識して取り組むことが肝要です。

 それでは、アジャイルPMの役割を果たすために、どのような知識やスキルを身につける必要があるでしょうか?
 PMI-Agile Certified Practitioner Examination Content Outline (1) に、アジャイルPMに要求されるアジャイルのツールと技法および知識とスキルが下記のように述べられています。PMI®では、これを参考にしてアジャイルPMが、アジャイル関連の知識やスキルを強化していくことを薦めています。
ツールと技法
  コミュニケーション
  アダプティブプラニング
  アジャイル見積り
  アジャイルの分析と設計
  品質管理
  ソフトスキルとネゴシエーション
  価値ベースの優先順位
  リスクマネジメント
  評価指標
  バリューストリームマッピング
  アジャイルツール
知識とスキル
  アジャイルマニフェスト
  アジャイル原則
  アジャイル手法
  フィードバック技法
  コーチング
  コミュニケーションマネジメント
  リーダーシップ技法
  チームモチベーション
  ステークホルダーマネジメント
  問題解決技法
  コロケーションと分散開発
  価値の優先順位
  継続的改善
  リーン
  ビジネスケースとプロジェクト憲章
  契約
  コンプライアンス
  アジャイル手法の適用
  イノベーションゲーム
  ベンダーマネジメント

以上

参考資料
(1)   リンクはこちら

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