PMプロの知恵コーナー
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「原発事故」 (2) まえがき

仲 俊二郎/小石原 健介 [プロフィール] :2月号

 これまで日本国民は、原子力発電(以下原発と略)は安全だという神話を何の根拠もなく信じ、先進国の繁栄を謳歌してきました。ところが3.11を境に振り子は反転し、原発ほど危険なものはないという認識を持たざるを得なくなりました。
広島と長崎に原爆を投下され、地球上で最も悲惨な経験をもつ日本が、どうして同じ原子力に頼る発電を安全だと断定してしまったのか。まるでお伽(とぎ)噺(ばなし)のような架空の安全神話をもとに、いっさいの疑問や反論を封印し、設備改善の必要性さえも無視してきたのが私たち日本人なのです。科学的であるべき学者が保身と物欲の前にひれ伏し、東京電力(以下東電と略)の金銭的援助を得て安全神話構築に力を貸してきました。歴代の政府も東電とタッグを組み、経済効率一辺倒で官民あげて原発推進に血道を上げてきました。その結果が今回の原発事故なのです。
 そのためいまだ16万人が放射能の不安におびえ、避難生活を余儀なくされています。農家や漁師も生活の手段を奪われました。それなのに東電や為政者や学者は、誰一人責任をとろうとする人がいません。「想定外の津波が来たから」とか「地震と津波の複合災害に対する危機管理が不備だった」など、まるで他人事のような言葉で逃げてしまっています。
 これが実相なのです。だからといってこれを看過するのは、後世の世代に対してあまりにも無責任ではないでしょうか。国民は今回の原発事故について、もっともっと知っておかねばなりません。
 日本に原発を存続させるべきか、それとも廃止するべきか。その判断をするためにも、問題の本質を知っていただきたいのです。もし存続させるなら、どうすれば被害を避けることが出来るのか。そういったことを理解するための一助として、32の質問という形でまとめてみました。
 執筆は仲俊二郎と小石原健介の共著であり、二人は川崎重工業の社員時代、数々のプラント建設の仕事をしてきました。20世紀最大のプロジェクトといわれるドーバー海峡トンネル工事を、仲俊二郎は営業のプロジェクトマネジャーとして、また小石原健介は技術の現地所長として、プロジェクトを成功させました。
 私たちは原子力の専門家ではありません。ただ産業プラント分野には長年携わってきたエキスパートだと自負しています。そのプラント屋としての立場から、繰り返しになりますが、同じプラントである福島原発がなぜこんな悲惨な事故を起こしたのか、どうすれば防ぐことが出来たのかについて、率直な考えを述べた次第であります。

以上
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