例会部会
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第168回例会報告

例会部会 生越 直人: 1月号

【データ】
開催日: 2012年11月22日(木) 19:00~20:30
テーマ: 「規格のない仕事のマネージメント」
~テレビ番組の制作について
講師: 中川 幸美 氏/(株)クリエイティブ・ネクサス 代表取締役

~ はじめに ~
 プロジェクトマネジメントは、様々な業界で活用されています。しかし、自分の業界での活用方法は理解していても、他の業界での活用方法はよく知らないのではないでしょうか。そこで、今回の例会では約60年の歴史を持つテレビ業界の「番組作成会社におけるプロジェクトマネジメント」についてご講演頂きましたので、以下概要をご紹介致します。

 講師の中川様は、番組制作会社のプロデューサーという立場で、テレビ番組作成のプロジェクトマネジメントに関わっていらっしゃいます。

~ 講演概要 ~
【他の業界との違い:規格がない仕事】
 テレビ業界のプロジェクトは、開始される時に寸法や素材などの仕様書がなく、企画書から全てが始まるという特徴がある。
 例えば、「クールジャパン」という番組の発注時に決まっていたことは、以下の通りであり、きちんと決まってから始まるものではない。
外国人の新鮮な目で見つけた日本文化のクールなところを紹介する
外国人の出演者は是非モノで、英語でしゃべらせる
NHKBSプレミアム(2005年当時)の夜10時台45分番組
 また、完成(納品の判断)は、判断する人の感性で決まり、クオリティに納得するまで制作が続けられる。

【テレビ局と制作会社の違い】
 テレビ局には、「営業」「編成」「広報」「映画」「制作」「技術」「美術」という組織がある。
 制作会社は、テレビ局の「制作」の中の報道・スポーツ・ドラマ・ドキュメンタリー・情報番組の作成を担当する。

【番組制作の流れ】
 番組の作成は、企画書の作成からスタートする。
 時代の空気にあった視聴ニーズを掴むと共に、普遍的なテーマを取り入れるような企画書を作成するようにしている。企画書を作成しテレビ局に持ち込み、不採用だと修正してまたテレビ局に持ち込むことを繰り返す。スタートから半年くらい企画書の書き直しを行って番組が決まることもある。

 企画が通って、番組を成功させるためには予算管理やクオリティ管理等を行う必要があるが、一番大切なものはスタッフ編成である。
 制作スタッフを集める時、責任者から決めている。責任者は、自分のチームのメンバーを決めるという方式で、全体のスタッフを決める。

【トラブル回避】
 企画が通り、番組制作=プロジェクトが始まると、必ずと言って良いほど何らかのトラブルが発生する。そこで、以下のポイントでトラブル回避=リスクマネジメントを行っている。
[ロケでのプロジェクトマネジメント]
コンプライアンス管理(例:交通規制、子供の就労時間など)
近隣の方々への気遣い
アクシデントの対応(例:天気に左右される、主役がインフルエンザになった)
[仕上げ(編集作業)でのプロジェクトマネジメント]
クオリティ管理(例:本編集前のチェック、ナレーションのチェック)
[取材先とのトラブル]
ロケをしたが、事前連絡なくカットすることがある → 誠心誠意おわびする
タイアップには注意が必要
[取材先にだまされる](例:店の客が店のスタッフで、番組側は知らなかった)
取材先との信頼関係を作る
[放送でのトラブル]
放送事故(例:黒味が出た!)
※ CMスタート時間を間違え、番組中にCMがスタートし、CM後に黒味が出た
間違った情報を流した

 トラブルの再発防止のためには、プロデューサ会議や役員会で情報を共有するようにしている。

【制作会社として理想の組織像】
 番組(プロジェクト)の評価は、テレビ局側は主に視聴率で行っているが、制作会社側はクオリティやディレクターの成長で行っている。
 ディレクターには成長曲線があり、3年ごとにピョンと上がる人が多い。そこで、成長が上がった時に給与も上がるようにしている。
 基本給(年齢+勤続年数)に職務手当(ランク)と職能手当(粗利)を与えている。
 「企業は人なり」と言われるように、スタッフが成長することは、会社の売上上昇につながる。

~ 感想 ~
 テレビ業界のプロジェクトは、ほぼ何も無いところからスタートし、成果物を完成させていることが理解できました。自分達は経験したことの無い、クリエイティブでありながら短期間で繰り返し実施しているプロジェクトであり、興味深い内容でした。
 このようなプロジェクトを成功させるためには、気心の知れたメンバーで行う必要があり、コミュニケーションマネジメントが大切であると感じました。また、良いコミュニケーションを実現させるために、人材育成が大切であり、成長した人材には給与で応えている点が印象的でした。

 最後に、我々と共に部会運営メンバーとなるKP(キーパーソン)を募集しています。参加ご希望の方は、日本プロジェクトマネジメント協会までご連絡下さい。

以上

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