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「ダイバーシティ時代のプロジェクトマネジメント」
~負けない力~

井上 多恵子 [プロフィール] :8月号

 イチローがヤンキースに移籍するという電撃的なニュースが、7月24日に流れた。私の中でのイチロー選手のイメージは常に自信たっぷりで、飄々としているもの。それが、24日の夕刊には、『涙こらえ「大変寂しい」』という大きな見出しとともに、彼のつらそうな表情の顔の写真が掲載された。

 アメリカのメジャーリーグの世界は本当に厳しい。「あなたはもういらない」と言われた翌日、元所属していたチームと対戦する。ヤンキースのゼネラルマネジャーが、決していいとは言えない今回の移籍の条件を大っぴらにあるスポーツ番組に語り、マリナースでも「放出できてよかった」という声があるという報道がなされる。7月26日には、今度は、松井選手がレイズから戦力外通告を受けた。彼もイチローと同じ38歳。

 過去にどんなに活躍していても、関係がない。今、どれだけの貢献をチームに対してできるか、が選手として残れるか残れないかを決める。映画「マネーボール」で描いていた世界だ。構造改革の一環で、職場環境が厳しくなっている会社は多いだろう。渦中にいると大変だ。ポストが減り、仕事が減り、社外に勤め先を探すことを余議なくされる人がいる。私自身、仕事はあるものの、異動に伴う環境の著しい変化で、ここ数ヶ月間、閉塞感を感じてきた。でも、イチローが置かれた立場に比べると、大したことはない。もちろん、彼はスターで大量の報酬をもらっているから比較の対象にならないかもしれない。でも、彼の場合大変なのはメディアを通じて全世界の人が彼の状況を知っているということだ。その中で負のスパイラルに入らずに、新天地で活躍するための力をどう前向きに発揮していくか。周りの雑音に負けない力、そして、自分を信じる力が求められる。

 ダイバーシティーがグローバル化が進み、社会の変化が激しくなると、組織に務める我々も、これまでとは異なった環境に身をおくことがますます求められるようになる。海外に目を転じてみても、これまでは先進国中心に取引をしていた企業や団体も、経験値が少ない発展途上国に進出していかなければならない。そういった国の文化や環境は日本とは大きく異なる場合が大きい。企業が伸び悩む中、競争も、そして職場環境も、ますます厳しくなってくる。そんな中で各人に求められるものは何か。変化を楽しんで捉えること。そして、自分のスキルを磨き続けること。

 皆さんは、その環境変化に対応する準備ができているだろうか。私は正直言うと、環境の変化に弱い。自信がある領域ならどんどん入り込んでいけるが、それ以外だと、急に自信がなくなる。今、まさにそんな状況でもがいている。自信がなくなるから判断が遅れたりにぶったりしている。「終わってしまっていまさらどうしようもないこと」についても、「なんであんなことをしてしまったのか」「もっとこうすればよかったのに」と考え、そっちのほうに頭がいってしまう。先の準備ができないでいて、また、上手くいかない状況を作り出している。悩む時間があればスキルを磨けばいいのにとわかっているが、元気に取り組めない。幸いお世話になっている方で、PCスキルを個人的に指導してくれるという有難い方がいるので、今度頼ることにした。

 なんとかこのスパイラルを断ち切りたい。イチローは、25日に対マリナース戦に出場した時、「体がとても重かった」と言う。しかしそんな中で、彼はヒットを打った。このヒットがきっかけになってポジティブになってほしい。私もなにかきっかけを得て、あるいは自ら作り、事態を好転させたい。私同様、もがいている人もきっといるだろう。「テンパラナイ技術」と題した本や、雑誌プレジデントに「意欲、集中、記憶、お金」お悩み別解決方法」という記事が掲載されていることからもわかる。ミーハーな私は週末さっそくこれらを読んでみようと思う。共に悩んでいる人たちへ。「負けない自分でいる」ためのきっかけを一緒に得てみませんか?どんな環境変化にも対応できる力がこれからますます求められるから。
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