スティーブ・ジョブズさん ありがとう
「これが欲しかったんだ!」を気づかせてくれたパイオニア
石原 信男:11月号
人それぞれに自分の欲しい商品をさがし求めています。その欲求のほとんどは、すでに自分の意識のなかで具体化されたものです。それらの多くは今までよりもさらに改良され
た高級機械式腕時計であったり、燃費のよいクルマであったりと、すでに私たちのイメージのなかに形づくられている商品です。
そんな市場にスティーブ・ジョブズという人は「これが欲しかったんだ!」という、人々がまったくイメージしていなかったような潜在的願望を気づかせ引き出してくれる、私た
ちにとっては革命的とも言える商品を提供してくれました。
専門家しか理解できないような特殊なコマンドをキーボードから入力して操作するコンピュータの世界に、マウス操作でシロウトでも使えるような革新的パーソナルコンピュー
タを提供し今の情報技術(IT)社会の礎となった“マッキントッシュ (Macintosh : Mac)”。
このあとこれを真似た“ウィンドウズ95”の登場はソフトウエアの多様さから商品としてのシェアでは先駆者の“Mac”を凌いだ形にはなりましたが、“Mac”はパソコンの普及が
もたらした現在のIT社会を切り開いたといっても過言ではないでしょう。私ごとで恐縮ですが、私が仕事や日常生活でパソコンを使いこなせるようになったのも、初期の “Mac”
の使用がきっかけとなっています。
“Mac“はいま “iMac”シリーズに発展し、他商品に装備されていない機能やデザインに魅せられたユーザや多くのファンに愛され続けているのはご存知の通りです。
スティーブ・ジョブズはさらに一連の携帯音楽プレーヤ“iPod”で、ものづくりの我が国が誇るソニーの“ウォークマン”を超えた領域の商品を創り出しました。音楽テープの
再生機であった“ウォークマン”とは異次元の商品で、無料パソコンソフトのiTunesを介して各人が望む楽曲を曲単位あるいはアルバム単位で購入し“iPod”にダウンロードでき
るという優れモノです。これによって、その気になれば自分の好む数百曲の音楽をたえず携帯できて、すきな時にそれを楽しむことができるようになりました。
スティーブ・ジョブズは携帯電話の世界にも変革をもたらしました。この世界の進歩は著しいものがあり、いわゆる高機能のスマートフォンの時代の訪れですが、スティーブ・
ジョブズはタッチパネル方式とアプリケーションソフトのダウンロードを利用した更なる機能の拡張と充実を実現した“iPhone”を提供、並行的に多機能端末の“iPad”をも提供
することで私たちの生活をさらに豊かに楽しくしてくれました。
このように、スティーブ・ジョブズは、自分のアイディアを立て続けに商品化し世界の人々に提供し、多くの人々に「まったく想像もしていなかった欲求を気づかされた喜び」
と、それらの商品を「持つ喜び」「使う喜び」、そして「これから先はどうなるかの期待」と「夢」を与えてくれました。
スティーブ・ジョブズと同じ時代を過ごせた私たちは、昨今のIT社会における毎日の生活を豊かにそして大いにエンジョイさせてもらいました。そして「次はなんだろう」の
期待を持たせてもらいました。だからこそスティーブ・ジョブズのあまりの早逝が残念でなりません。あの素晴らしいプレゼンテーションがこの先も聞けたならば、私たちの人生
はもっともっと豊かに楽しくなったはず、そう思えてならないからです。
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