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原因分析の今日この頃

町田 仁司 [プロフィール] :12月号

業務を進める上の必須のことの1つに原因分析があります。特に市場障害や様々な問題を解決する際に、問題の本質である真因を究明する場合に多く用いられることは言うまでもありません。数多くある原因分析ツールの中で、いまだに顕在なツールは「なぜなぜ分析」であると思います。今回は「なぜなぜ分析」を中心に有効に活用するための小さなヒントなればという思いで記載します。
まず原因を究明する観点は大きく、「人」「人以外」に分かれて、一般的に後者が有効とされています。前者「人」は「個人」の責任追及に終始する危険性があります。そこで私は「人」は「個人」と「組織」に分かれて、「個人」の原因究明は「個人」ではなく、人間の誤りを起こす特性すなわち人は誤りを起こすことを前提にすれば、もっと本質的な分析が可能で、後者の「人以外」の分析に強い関連性をもっていると考えています。またもう1つの「組織」は原因分析では不可欠なもので、個人の誤りを予防・防止する上で最も効果があると言えます。プロジェクトマネジメントでは組織力が問われますが、まさに個人の引き起こした問題を如何に組織に照らし合わせて分析するかが重要です。

次に「人以外」についてです。当たり前ですが「人」なしでは原因分析はできません。しかし人が「人以外」の観点で分析することが有効とされています。その一方で原因の本質に近づくにつれて、人の観点が再浮上してくることがあります。ここではプロジェクトマネジメントの観点を主体に分析し、付帯要素である顧客使用環境の観点やプロジェクトの変化点の影響などを取り入れて分析することが有効とされています。この内容に人の特性を客観的に取り込むことが、ベストな原因分析であると確信しています。

ここで「なぜなぜ分析」について、ポイントを述べます。
ます、なぜなぜ分析の回数について、5回が概ね一般的で3回や真因に行き着くまで行う など色々な案がありますが、どこまで行えば妥当かについてよく質問を受けます。私は以下の2つのポイントであると考えます。1つは原因分析の対策が実現可能なレベルにあるかです。これはPDPC法(Process Decision Program Chart)の考えと共通するもので、如何に有効な対策であっても、現実と乖離しては意味がないことです。
もう1つは、回数に固守せずに、各回数の原因分析に対する対策が今すぐにできるものであれば、実施して効果を見る方法です。当然ですが、その時点の深堀度合いは複数の目で確認すべきです。こうして効果をみて分析を再開する方法もあると思います。

次に、なぜなぜ分析で重要なことは、1つのなぜに対して、必ずしも原因は1つでなく、複数の目で考えられる原因を洗い出し・整理し、分岐して分析を行うことです。こうした場合、真因も複数になる場合もあれば、最終的に1つに集約される場合もあります。最も重要なことは、様々な側面で原因を列挙した上で真因を炙り出すことであると考えます。

次に、なぜなぜ分析で陥りやすいポイントについてです。一般的に以下の2つがあります。
1つは原因を掘り下げる場合、なぜ防止できなかったという流出系の原因が多く、内容もテストの漏れなど下流工程の原因に終始することです。これも必要ですが、なぜ発生したかの本質を上流工程で見極めることがさらに重要であると考えます。
もう1つは、結論(真因)を先に決めてしまうことです。特に進行者に固定観念がある場合や上位層が参加して行う場合にこの傾向があるようです。このため、過去の事例を意識せずに、ゼロからの分析を行うことが本質的な分析結果を得ます。

色々と述べてきましたが、最後に原因分析は組織(特に現場)の棚卸しの1つであると考えます。これが定着すると、現場の問題が停滞せずに、PDCAが回り、継続的な改善が進むことになると確信しています。但しなぜなぜ分析にしても、方法は1つではありませんので、それぞれの組織にあった形で実践することがよいと思います。
以上
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