今月のひとこと
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PMの日本化

オンライン編集長 岩下 幸功 [プロフィール] :3月号

 プロジェクトマネジメント知識体系が日本に入ってきて20年近くになります。それを日本ではプログラムマネジメントへ拡張し、「P2M(Project & Program Management)」として発信しています。この間、多くの分野で外来知識(主に米国PMBOK)を反芻咀嚼し、実践改善を重ねてきましたので、これから本格的な「PMの日本化」のフェーズに入っていくと考えられます。

 「日本化」の方法としましては、歴史に学ぶべきものがあります。仮名(ひらがな)文化の発明です。中国から漢字を輸入しましたが、それを咀嚼して大和風の柔らかい仮名(ひらがな)を発明しました。しかし「仮名」が発明されても「真名(漢字)」は捨てませんでした。「訓読み」が可能になっても尚、「音読み」を採用し続け、つまり音訓両用で更に高みの文化を創造してきたという歴史です。このことは、神道と仏教共存の「神仏習合」も、明治近代化の「禅から哲学へ」の接近も同じ文脈です。
 それは「デュアルスタンダード(重層標準)」(松岡正剛)と表現できるものです。「ダブルスタンダード(並立標準)」という言葉もありますが、意味合いが異なります。「ダブル」というと、並び立つ二者が二重の状態になってはいるものの、その二者の間に相互に作用するような関係が認められません。「デュアル」はどうかというと、二者が相互作用しあっている、インタラクティブな関係にあるということです。二つのことを分けて別々に使うのではなくて、ふたつを時宜と目的と感覚によって使い分けたのです。武蔵の二刀流のようなイメージです。
 この考え方に照らすと、現在の日本のPMはダブルスタンダードの状態でしょうか、デュアルスタンダードでしょうか? 実態は未だ前者のように思います。「欧米的なものを導入したが、消化不良である!」、逆に「日本的な良さを、見失ってしまった!」、更に「中途半端な取り組みで、お茶を濁している!」という状態ではないでしょうか? したがって、更に「日本化」していくためには、真名(漢字)に対して仮名(ひらがな)を発明したように、日本の文化に深く根差し、使いやすく、日本の強みを発現できるものに進化させる必要があると思います。「守破離」という表現を借りるなら、「守」の状態から、「破」または「離」へと脱皮させていくという主旨です。

 以上の観点から、ジャーナル37号では「私流PM、日本流PM」をテーマに論文を公募しましたところ、12名の方々からご寄稿を頂きました。さまざまの分野から、さまざまな視点から、実に読みごたえのある、示唆に富む12編でした。ご寄稿を頂いた方々には、この場をお借りしましてお礼申し上げます。それらを下記のように編集しました。来月初めにはお届けできる予定ですので、今後の議論のきっかけになればと期待しています。

                  特集I 「私流PM、日本流PM」
「日本流の考察」
論文@「日本流リスク・マネジメントに関する考察」 黒川 信弘
論文A「わが国製造業の強みを再構築するには」 山田 善教
論文B「日本流プロジェクトマネジメントの復活」 下野 善弘
論文C「システム調達にユーザ部門の主体性を取り戻す」 前田 卓雄
   
「現場の創意工夫」
論文D「標準とレビューに基づく危険予知」 青島 弘幸
論文E「現場でのSIプロジェクトマネジメント」 佐藤 義久
論文F「小規模インフラ系PMのベストプラクティス」 中谷 公彦
論文G「製造業の生産現場におけるP2Mの活用」 藤澤 正則
   
「異文化と日本流」
論文H「異文化を束ねるチーム運営のコツ」 長谷川 義幸
論文I「人間力にねざした日本流プロジェクトマネジメント」 小石原 健介
論文J「当世ベトナムPM事情。しかし、課題はそれ以前」 八谷  賢次
論文K「英語環境でのコミュニケーション」 スワガー恵理
      (敬称略)
 
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