本書は7つの章で構成されているが、書評では第1,3,4章を中心に紹介したい。
2. 本書の概要
第1章 ナレッジ・マネジメントの原理 |
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ナレッジ(知識)とは何か
知識は人間だけが所有でき、知識は人に行動力をもたらす。そこで人は必要な情報を集め、理論や、問題発見解決手法を利用し、知的な意思決定を行なってきた。ナレッジはこのようにして企業や人々に大きな富や地位を与えてきた。
人々を行動に導く知識が「ノウハウ」であり、大規模な組織においては「知識」や「ノウハウ」は共有の知識と見なされ、ネットワーク型組織はこれら共同知識と他の知識を活用して、共有体験の中から新しい知識を生み出している。この知識を文書化し、誰にでも理解されるように整理されたものが形式知となる。しかし、共同体の経験やノウハウは形式知化できないものが多くあり、これを暗黙知と呼んでいる。 |
2) |
ナレッジ・マネジメント(KM)とは何か
KMとは基本的に組織内部の個人やチームが、組織のどこかにある適切で実行可能な助言、知識、経験へのアクセスを最適化するためのシステマティックナなアプローチである。
また、近年は無形資産の価値が高まり、この視点でKMを取り扱う必要に迫られている |
3) |
「プロジェクト・ナレッジ・マネジメントの必要性」: |
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知識は業績に貢献し、業績から知識が導かれる。 一貫した良い業績指標、業績文化、業績測定、報告制度と目標の設定、社内ベンチマークを併用すると効果は大きい。 |
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A |
学習曲線の活用:プロジェクトの開始前に過去の有用な知識を採用することで、その学習効果は16%、ベンチマークと併用すると22%のコスト削減に繋がる。 |
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B |
創られた知識の処遇:どの知識がプロジェクトにとって価値あるものかの選別、保管、検索ができると、この知識は業績獲得に貢献できる |
4) |
「ナレッジ・マネジメントの効用」:
知識基盤の上に新しい知識を創出され、その知識が即座に使えるシステム(KMシステム)は企業の組織能力を高め、競争力で優位性を発揮できる。KMなしではナレッジの整理、検索ができず、人々の仕事はゼロからの出発となり、効率が悪く、人々の持つ高い能力が活用されない。 |
5) |
ナレッジ・マネジメント・モデル −知識創造と知識移転−
ナレッジ・マネジメントは知識の提供者と利用者で成り立つ。 |
1) |
知識の提供者は知識の創造者
知識は経験を通じて創られ、体験を反省することで、行動指針、規則、論理、問題発見解決手法が導き出される。これらが創造された知識であり、また提供される知識となる。 |
2) |
知識の移転
知識の移転は次のプロセスをふむ。 |
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人から人への直接移転(コミュニケーションによる) |
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A |
人からナレッジ・バンクへの知識移転(知識の補足、暗黙知の形式知化) |
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B |
ナレッジ・バンクにおける知識の体系化(組織化) |
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C |
ナレッジ・バンクから人への知識逆移転(アクセスと検索利用) |
3) |
知識の再構築―事前・事中・事後の学習モデル―
プロジェクトは開始時期に、プロジェクトリーダーが、過去のベスト・プラクティスを事前学習することで、計画が緻密になる(事前学習)。プロジェクトの進行中に新しい知識を利用すると、更に大きな成果を得ることができる(事中学習)。最後に、プロジェクトで生まれた知識を将来の利用に備えて補足し、プロジェクト終了時には新しい知識として組織が認識する(事後学習)。プロジェクト初期の利用者は終了時には提供者に転換する。そこでプロジェクト終了後には新しい知識が蓄積され、他のプロジェクトへ移転される。
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