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「スリーエスを考えよう」

MM4リーダー:富士通株式会社 松田 浩一 [プロフィール] :8月号

1.はじめに
 現在、私はIT-SIGのPS研究会で活動しております。オンラインジャーナルを御覧になる方にはPSは既におなじみになってきたのではないかと思いますが、今回はあらためて「PS」と「ES」、「CS」についての考えをまとめてみました。きっかけは「何で我が事業部のESが低いんだ!高くしろー!」って叫んだエライさんがいたとか、いなかったとか、もういちど自分自身の考えを整理する時期に来ていると感じたからです。
2.「CSとES」
 最も良く知られている「CS:顧客満足」は企業にとっての生命線でもあり、その企業が存続する理由にもなると思います。お客様が必要としている、満足する商品や成果を提供できるかどうかがその企業の存在価値でもあるということは明確な事柄です。
 次に「ES:従業員満足」ですが、これは企業運営をする社員の満足が高くないとその社員が提供する成果も高くすることは出来ないだろうという考え方を元にしています。つまりESを向上させることで間接的にCSがあがるという考え方です。逆に「CSをあげるためにESが必要」という事からES向上に着目されたのだと思います。ここで忘れてならないのはES向上そのものが最終的な目的ではなかったということです。先に述べた「自部門のESを上げろ!」という号令は直接的にES向上させる意識が強くなりすぎてCSのことを忘れてしまっている可能性を示唆しています。ESそのものの改善を目的とするより、ESはCSのためにあるという点を念頭においておくことが重要です。極端な例ですがES向上を狙って給料を倍にしたら、成果が倍になるかというと、可能性は非常に低いと思います。蛇足ですが、仲間が集まって活動するような、非営利集団としては、ESそのものを目的にするということはあるのかもしれないです。
3.「ESとPS」
 「PS:パートナー満足」の概念ができたのは、複数の企業のメンバーが同じプロジェクトのメンバーとして集合し、プロジェクト型で作業を進めることが多くなっているという背景かあったためです。特にITプロジェクトでは中心となる会社はあっても、大規模開発の場合は特に、色々な企業のメンバーが集まって作業をしています。こういったプロジェクト型作業で成果をあげるために、ESのような概念としてPSを提唱しています。プロジェクトに関与している複数の企業が、おのおのの所属社員にも同じ待遇で同じようなES向上施策を足並みそろえて実施することはなかなかできません。プロジェクト型の作業では、所属会社のESに頼ったCS向上は難しいということです。ではPS向上で問題は解決するかどうかですが、その点も簡単な話ではありません。ES向上は企業側が主体として推進したり、決定したり出来ますが、対象はその企業に所属する社員のみです。一方でPS向上はPM(プロジェクト・マネージャ)が推進することが多く、プロジェクト型の職場では、複数の企業に所属しているメンバーを対象にしたPS向上対応策は非常に制限されます。例えば、有給休暇を与えるとか、報奨金を出すとか、給与体系を変更するとかはプロジェクトで決められることではないからです。また、様々な作業を分担して作業するメンバーに対してプロジェクトが公平にPS向上するための施策を打つことはなかなか難しいものです。リーダーのお気に入りのメンバーや話の上手なメンバーが評価され、地道に作業するメンバーが目立たないということもあります。「公平」という観点から、下手なPS向上対策では全体のPSが下がることも大いにあり得ます。
4.これからのPS向上対策
 これまで私はPSの測定という観点に重きを置いて活動してきましたが、合わせてPS向上対策についても充分考察していきたいと思います。従来はWGメンバーの所属するプロジェクトで様々な施策を打ってきた事例を蓄積し、類似の環境にあるプロジェクトに適用するのが良いと考えていました。しかし、事例そのものは役に立つ場合があるとしても、基本的な考え方や理論的な根拠を持って事例を捉え、適用することが出来ないと効果は薄いと反省しています。
 PS向上するための検討対象となる事柄には、プロジェクトそのものの属性、従事するメンバーの組織的背景(個人的事情は除きます)などの被適用対象と、プロジェクトとして実施する対策の2つの側面があります。この対象と手段のそれぞれについて検討して行きますが、ここで重要なのは対象と手段の組み合わせだろうと予想しています。良かれと思った手段(PS向上対策)が、対象プロジェクトによっては、逆効果になるようなこともあるでしょうし、思ったとおりに効果が出るかもしれません。今後のWG活動では測定に加えて、PS向上対策についての基礎的理論を確立させていきたいと思います。
以上

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