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「IPAの裏話」

アクシオヘリックス株式会社 向後 忠明 [プロフィール] :6月号

 情報処理推進機構(IPA)という組織はIT事業にかかわっている皆さんには良く知られた組織と思います。情報処理試験の推進事業体でもあり、日本の情報産業の発展のためという名目で作られた経済産業省配下の独立行政法人です。
 私は4年前にIT人材の育成を目的としたスキルの標準作りを行っているITスキルセンターのプロフェッショナルコミュニティーの委員として嘱託されました。ここでは各種の専門分野のスキル標準を作成していますが、私はプロジェクトマネージメント(以下PMといいます)専門分野のプロフェッショナルコミュニティーの委員としてPM分野のスキル標準と育成ハンドブックの作成にかかわってきました。委員は12名で構成されているが出身会社は日本IBM、NTTコム、NTTデータ、パナソニック、キャノンシステム、富士通、NEC、日立、・・・であり大手の企業の部長クラスの人たちです。
 しかし、このプロフェッショナルコミュニティーも4年も続けると皆さんも忙しく、徐々にこのコミュニティーから抜けていく人もあり代わりに新しく入ってくる人もいます。
 このような状況下でITスキル標準やハンドブックを議論、検討しながら作成していきました。
 しかし、皆さんもご存知のようにITスキル標準は専門分野ごとに別れまた役務の段階が戦略企画からサービスまでの間をそれぞれの専門分野ごとに仕分けされています。
 特にITアーキテクトやコンサルの役務の段階はPMのそれとどのように違うのか理解に苦しみました。その上、今度はサービス分野でITSM(ITサービスマネージメント)といった分野もでき、これもPM分野とオーバーラップします。
 それぞれがコンサルは別としてスペシャリスト分野の一つとして、仕分けすればよいと思ったくらいです。そして、PMがこれらスペシャリスト集団を使ってプロジェクトをまとめればよいと私は思っています。コンサルにいたってはまさにそのリーダがPMです。
 このようなことを考慮すれば、ITスキル標準はもっと簡素化したものに集約できると考えています。しかし、誰しもが分野が違うとそれぞれの分野の委員は自分の分野を侵されたくないといった意識が強くなります。このようなことでPMの分野そして活動役務段階は現在のような狭いものになってしまいました。
 ITの世界は別としてPMの役務を広く解釈すると上記に述べた分野も役務段階もPMが介在するのが普通です。P2Mがまさにこの考えです。
 しかし、ITスキル標準はPMBOKを基本ベースとしているので私がP2Mベースの話をしても多勢に無勢で現在の形になってしまいました。
 また、PMの分野でもシステム開発、ネットワーク、アウトソーシング、ソフトウエアー開発と4つの分野に分けています。
 私の考えではPM分野は一つの分野で十分と考えています。しかし、それぞれの企業にはそれぞれのやり方があり、また全部の技術的知識を持つ人材もいないという意見が多く、結局は現状の通りとなってしまいました。
 PMの活動エリアは何もIT分野だけではありません。私のPMのあり方は「PMはプロジェクトに与えられた諸目的に対し各分野にわたる組織、技術そして人間の知恵を結集・統合しプロジェクトの各段階で業務を最適に実現させるための一連の活動」です。
 すなわち、それぞれの分野知識は専門集団に任せ、その知識や技術を統合して、ひとつのシステムを全段階にわたってプロジェクトをまとめることができなければいけないという考え方です。
 よって、ITスキル標準におけるPMスキル分野分け及び段階関与の定義はP2Mのものから大きくかけ離れています。
 上記がこれまでエンジニアリング会社出身のPM、そしてNTTでのIT分野出身のPMの経験則の両方を持って、持論を述べてきましたが、尊重はするが現実的でないと言うことで現状のままとなってしまいました。

 現在のPMプロフェッショナルコミュニティーの主題は「PMレベルとその評価基準」「中小規模企業とITスキル標準」そして「PMのコンピテンシー」等々について議論しています。
 これらの結果は7月に開催されるIPCA(IPAが開催する発表会)にて発表されるでしょう。
 なお、今回はPMハンドブックに情報処理試験を含め、PMBOK、PMS、PMRをレベル選定の推奨資格試験の参考として載せることにしました。結果はまだですがこれが通ればP2MもITスキル標準の仲間にはいることになります。

 まだまだ沢山書くことがあるのですがこの辺で筆を止めます。
以 上

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