図書紹介
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アホは神の望み
(村上和雄著、サンマーク出版発行、2008年11月15日、第4刷、1,600円+税)

デニマルさん:4月号

今回の本は、題名の奇抜さに惹かれて手にした本である。冒頭、「アホが世界を変える」とあった。読んでみて、著者の偉大さとこの本で述べられている遺伝子に惹き込まれた。先ず著者であるが、知る人ぞ知るDNA解明の世界的な権威者である。1983年に高血圧の黒幕といわれる酵素「ヒト・レニン」の遺伝子解読に成功している。他にイネ(稲)ゲノムの解読もしている。こうした最先端の遺伝子工学の研究から、次の日本のノーベル賞候補として注目されている。更に、遺伝子の研究から「心と遺伝子は繋がっている」という研究もしている。それによると遺伝子は先天的なものであるが、生体内外の環境により後天的に変っていく、それをこの本で書いている。しかし、遺伝子=生命の未知なる部分は、解読されてもまだまだ機能面まで解明されていない。特に、心の部分は未知の分野なので神の領域である。著者はこの点に関し「心と遺伝子研究会」を組織して独自活動もしている。

神が授けた智恵(その1)   ―― 陽気であれ(笑いの効用) ――
遺伝子分野は、神から授かったというか、生まれながらにして親から授かったもので、個人ではどうにもならないものと思われている。しかし著者の研究では、人間の成長過程の環境や考え方で変化すると書いている。その中に「笑い」(陽気に振舞う、物事を悲観的に考えない)があるという。糖尿病は遺伝的要素が強い病気である。その患者に「笑い」(漫才)を聞かせると血糖値が下がる実験結果を得ている。この結果も神の智恵かも知れない。

神が授けた智恵(その2)  ―― 正直・愚直であれ(他人を助ける) ――
遺伝子で構成された生き物、特に人間は、競争社会に生かされて、他人に負けない弱肉強食の中にある。だから生まれ持った才能を活かさなければならない。しかし、その先天的ものだけに頼って、賢く、小利口で、小ざかしく自分の力でだけで生きていると思い上がりの考えでは、駄目だといっている。他人を思いやり、助ける気持ちと正直さが、結果として才能を開花させる。目に見ない自然と生命の力が、人間の偉大さを一層引き出すという。

神が授けた智恵(その3)  ―― 愚か・アホであれ(命の循環) ――
著者は科学者であるが、目に見えない「何か大きなものの存在」を信じている。長年の研究から「人の遺伝子は、その人の強い思いで変えることが出来る」と確信するようになったと書いている。それを『サムシング・グレート』と名付けて、この遺伝子を変えるスイッチは、感動、喜び、笑い等と人の思いを支えるイキイキ・ワクワクの気持ちが作用するという。それを信じる「大いなる愚かさ」(アホさ)が、偉大なる人間を育むと結んでいる。

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