PMP試験部会
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プロジェクト・マネジメントと資格・講座について

堂下 史郎:5月号

私がPMP試験部会(現 研修第2部会)にいわば飛び入り的に参加し、活動するようになってから早5年目を迎えています。PMP試験をとりまく状況は当時とは全く様変わりしており、わずか5年の間にめまぐるしく変化しました。
2003年当時、一般参加可能な研修、講座は当PMP試験部会主催の試験対応講座を含め、片手で収まるほどだったと思います。日本語の試験対策書、参考書の類も非常に限られていました。そういった状況の下での試験対策は、本当にどう勉強したらよいのか、財布とも相談しながら自分で真剣に悩まなければならなかったように思います。 今は、業種を問わずPMPという資格が広く知られるようになり、それとともにPMP試験対策がビジネスとして注目されるようになり、まさに雨後のたけのこ状態となっているといってよいでしょう。「PMP試験対策」はもはや書籍を含めてコマーシャルな響きさえ持つような言葉となりました。
われわれPMP試験部会も講座の改善や新規講座の開発に向けた活動を継続していますが、PMP試験関連だと良いコンテンツを開発しても、果たして人気講座となるのかどうか、若干不安な面はあります。

そこで以下では、資格や講座という面で今後の有望な分野を考えてみたいと思います。

■プロジェクト・マネジャーと実践力
プロジェクト管理の資格はPMPだけではなく、当PMAJが推進しているPMSもありますし、情報処理(IT)の分野では、もともと通商産業省(現:経済産業省)が実施する国家試験であった情報処理技術者試験の「プロジェクトマネージャ試験」という資格もあります。それぞれに特色があり、排他的な位置づけではなく、いずれもその人のプロジェクト・マネジメントに対する一定の知見を客観的に評価する指標として有効だと思います。
私は20年以上情報システム業界の現場に立ち、プログラマー〜SE〜プロジェクト・マネジャーとしてほとんどの年数をプロジェクトで過ごしてきているのですが、現場にいるメンバーは、プロジェクト・マネジャーに対し、「実践力」の部分での期待が大きいように思います。PMBOKガイドでいえば、主に「プロジェクト実行の指揮・マネジメント」プロセスに該当する部分です。私がかつて現場メンバーだった頃、計画・実績管理(のみ)に長けたプロジェクト・マネジャーもいましたが、やはりそういった人は現場からは遠い存在で、Hotな状況を理解していないことが多かったですし、そういった人の取る「プロジェクト戦術」に対して違和感を感じることもしばしばありました。
プロジェクト実行の指揮・マネジメントは適用分野に大きく依存する部分であり、PMBOKは汎用的なベスト・プラクティスというのが基軸ですから、PMBOKにおいてもあまり詳しく書かれていません。PMBOKやPMP試験だけを追及していっても得られないものはある、というふうに思います。

PMP資格保有者は日本でも2万人を超える時代となりました。
それらの人はプロジェクト・マネジメントのベースとなるコンピテンシーを持っていることに間違いはないと思う一方で、全員が「実践力」を備えたプロジェクト・マネジャーか、というとおそらくそれはそうではないと思います。
したがって、PMP試験合格は単にベース地点を通過したにすぎず、真に現場で求められるプロジェクト・マネジャーとなるためには、その後の育成が非常に重要となります。

私個人の意見としては、汎用的な知識の集大成はPMP合格までに行い、その後の教育は適用分野色を強く出した講座なりコンテンツ、あるいは少々プロジェクト・マネジメントそのものとは距離を置いた「人」に着目したコンピテンシー・スキルに関して特訓していく方が効率的であるように思います。少し極論になるかもしれませんが例えばITの場合だと、「xx構成下でyyデータベースを使用したシステム構築マネジメント・演習」のようなものは前者ですし、「xxコミュニケーション(メソッド)実践」、「メンバー・コーチング実践」などは後者のイメージです。

■PMP資格の継続
PMPは、3年毎に資格を更新しなければなりません。
この3年間で60PDU(60Professional Development Units:簡単に言うと3年間で60時間のプロジェクト・マネジメントに関する教育を受けなければならない)を取得すること、はその人の所属する企業内研修の状況によっては、また悩みの種となるかもしれません。

今、世の中のPMP関連の教育は「試験対策」に著しく傾斜していて、この60PDU対策はあまり注目されていない印象です。日本でPMP資格が本格的に着目されだしてからまだ3年余、まさにこの資格の継続対策は今後の注目分野となってくるでしょう。

■プロジェクト・マネジャーの役割分化
一昔前のプロジェクト・マネジャーという役割は、基本的に何でも一人でこなさなければならない役割でした。さらに、複数プロジェクトを担当する「プログラム・マネージャ」という考え方もなかったように思います。もちろん実際には複数のプロジェクトを自分の管轄下としている人はいましたが、それはどちらかというと、有能なプロジェクト・マネージャが単一のプロジェクトで成功を積み重ね、組織内でそれが評価され、部門長へと昇格し、その部門で受け持つ受け持つ複数のプロジェクトを自管轄下とする、そういう流れの中での複数プロジェクト管理であったように思います。

プロジェクト・マネジャーが何でもできる、というのはもちろんありえないですから、私は、プロジェクト・マネジャー、あるいはプロジェクト・マネジメントはますます分化していく方向にあると思います。

現時点では、PMPに対する注目度に比べると、同じPMIが認定するPgMP(Program Management Professional) という資格はほとんどまだ注目されていません。
私は、プログラム・マネジメントは単なるプロジェクト・マネジメントの延長にある、ということではないと思っていますし、プロジェクト遂行組織にとって、プログラム・マネジャーはプロジェクト・マネジャーと同様に必要不可欠の存在であると考えます。
さきほど述べたように、プロジェクト・マネジャーには「実践力」が求められる一方で、プログラム・マネジャーには組織としてのビジネスやポートフォリオといった総合戦略の側面が強く求められるように思います。
当然、必要な教育も異なるわけで、プログラム・マネジメントの教育は今後の必要分野だと思います。

また、最近はPMO(プログラム/プロジェクト・マネジメント・オフィス)の考え方は浸透しつつあると思いますが、これも一昔前はなかった考え方であり、(やや極論ですが)個々のプロジェクトやプロジェクト・マネジャーに課されていた役割が分化し、独立したものと考えることもできます。PMOが浸透したといっても、これもやはり現在のPMPの注目度からすると、あまり大きくないですから、今後、PMO関連の資格というものができるかもしれませんし、教育という面でも注目されてくるものと思います。

私個人としては、現場でメンバーとともに切磋琢磨し、共に考えながら実行の指揮をしていくプロジェクト・マネジャー〜実行屋として腕を磨いていきたいという想いは持っていますが、組織のニーズという事情からするとプログラム・マネジメントやPMOの分野をめざしていかざるを得ないのかもしれません。

私は今後も、PMP試験部会での活動を通じて、プロジェクト・マネジメントの資格、あるいは講座のあり方、というものを引き続き考えていきたいと思っています。

以上

※PMP、PMI、PMBOKは米国Project Management Institute, Inc.(プロジェクトマネジメント協会)の登録商標です。
※PgMPは米国Project Management Institute, Inc.(プロジェクトマネジメント協会)のサービスマーク(商標)です。
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