トピックス(活動報告)

日本国際宇宙ステーションプログラムマネジャー
長谷川 義幸氏よりのお便り(第一報)、(第二報)

長谷川 義幸:4月号

日本実験棟「きぼう」打ち上げのために、NASAのケネディー宇宙センターにきています。本日、午前中にきぼうの第1便の打ち上げ2日前審査会が開催され、参加しました。およそ、100名がセンター内の会議室にあつまり約1時間10分ほど、スペースシャトルと宇宙ステーションの関係部門(20部門位)のNASAと企業の専門家があつまり、打ち上げの準備状況の確認を行っています。

会議は、ビデオコンファレンスで、ジョンソン宇宙センター、ラングレー宇宙センターほか10か所程度をむすんで行っていました。会議は、打ち上げ責任者のリロイ・ケインが議長として仕切ります。雰囲気はいままでになく、スペースシャトルの問題がなく、また、宇宙ステーションの状態も大きな問題がないため、リラックスした雰囲気でかつ、服装もカジュアルな服装で進行しています。彼はシャトルのフライトをながく経験しているメンバーの印象は、かつてないほど、笑顔とリラックスした雰囲気は初めてだとのこと。

前回の欧州宇宙機関のコロンバス実験施設の打ち上げがシャトルの外部タンクの燃料消費センサー系統の不具合により、昨年12月が暗い雰囲気で延期された。しかし、2月の打ち上げ前に原因が特定され対処がされたため、打ち上げは成功し、かつ、その対策が間違いないものとなったので、今回の打ち上げにも水平展開され対処が完了している。
その他の細かな問題も、前回までの不具合の改善を行っており、シャトルはいままでにないくらい、状態のよいものになっているとのこと。

また、天気も悪くなく、打ち上げにむけて順調に進行中。議長は、全体を技術的に掌握しており、キチンとつめを行い、結論をだしてゆく。そして、ボードメンバー20名ほどが、GO/NO GOの表明をして結論をだした。全員GOでうちあげにむけてそのまま進むことになった。プログラムマネージャーの素晴らしをみた。ロケットから、構造、燃料、流体、電気、管制等分野が非常に広いのみ、それを理解し、問題を識別し仕切れる実力に感動した。

日本のマスコミも、TV,新聞をふくめて多数きており、アメリカのマスコミも関心を示している。

以上、打ち上げ、2日まえの様子です。
JAXA 長谷川@KSC

「ケネディー宇宙センターから「きぼう」日本実験棟打上げ報告」(第2報)
                     プログラムマネジメント 長谷川 義幸

およそ20年待った国際宇宙ステーションの日本宇宙施設「きぼう」第1便の打上げがここNASAのケネディー宇宙センター(以下KSCという:Kennedy Space Center)で3日後の3月11日朝2時半に行われることになった。小生がこのプロジェクトに参加して早や18年が過ぎようとしている。まさか自分が責任者の1人としてこの場にいようとは想像だにしていなかった。

1. 打上げ4日前
 筑波からKSCに移動する。きぼう打上げ運用隊の隊員とともに、成田からKSCに近いフロリダ州オーランド空港に到着する予定であったが、雷雨、風雨が強くヒューストンから乗り継ぎ便の出発が1時間半以上遅れ、さらに、オーランド空港の気象状況が悪いため、旋回して1時間程度待機、その後、空港を目指したが、天候が悪く、着陸せず、さらに空港の東上空を大回りして30分時間をかせぎ、ようやく着陸した。4時間以上遅れ夜中の0時を回っていた。空港はまだ、風が強く土砂降りの雨。先輩の運転するレンタカーでホテルを目指した。道路は、亜熱帯によるある大きい雨粒が強い風でフロントガラスをたたき、視界は非常にわるくスピードを押さえてゆく。幸先悪し。これで、打上げは大丈夫か?心配になった。午前1時にホテル到着、先発隊のオフィースにゆくと、NASA TVでまもなく今回スペースシャトルに乗り込むクルーが、ヒューストンから到着するとのこと。実は、天候が悪くクルーの移動が遅れていたとのこと。隊の広報班とマスコミのメンバーがスペースシャトルの着陸場に向かったとのこと。幸い、クルーの飛行機が着陸するときには、雨は比較的小降りになった。

2. 打上げ3日前
朝早く起きた。雨はやんだが風は強い。今日は、古川宇宙飛行士と小生の2人で日本人記者団との会見をNASAのプレスセンターで行う。 JAXA広報用の仮設トレーラーハウスが時たま吹く突風でゆれている。本当に打上げ日までに、晴れて風もなく、雨もない打上げ日和になるのか不安がよぎる。新聞やTV等のマスコミの方が30名程度集まった。今までにないほどの数。広報班によれば、打上げ前にはもっと増えるという。今までKSCできぼう実験棟のプレス公開を行ったが、あまり来てもらえなかったのに比べ打上げは別のようだ。記者会見は、同時通訳をいれ、1時間にわたり行った。日本が高い安全と信頼性を必要とする有人宇宙施設を開発できる能力を身に付け、国際宇宙ステーションの一部として国際的に日本の国力と存在をアピールできること、かつ日本とNASAはじめとするパートナーが共同利用することにより国際貢献と先端の宇宙科学技術研究を実施して国民に利益を還元できることを説明した。

3. 打上げ2日前
打上げ2日前のNASA打上げ準備審査会が朝8時から開始された。NASAの内部会議であるが、今回は、日本とカナダの宇宙施設が載る関係でボードテーブルのそばの席に座った。前回までは、スペースシャトルの断熱材のはがれや液体水素燃料の枯渇センサー対策等の課題が山済みで会議は丸1日厳しい表情で行われたとのことであるが、今日は関係者笑顔で雑談をしたり、リラックスしくつろいだ感じで余裕の雰囲気であった。実際、大きな課題がなく、いままでのアクションアイテムの履行確認を丁寧に議論して合意をとってゆく。議長は、ミッション遂行責任者リロイ・ケイン。スペースシャトルのことで何を問われても技術的に答えられるベテラン。技術の香りがするレベルの高い会議である。最後に、空軍の気象予報の専門家が、きぼう打上げ日、と翌日の打上げのKSC近辺および、緊急着陸場所、スペインをふくめて予測。非常に良好で問題なし。さらに、16日後の着陸時期近辺のKSC、カルフォルニア州、ホワイトサンズ、スペインの天候を予測。着陸に支障のある風や低気圧等の障害のないことを予測。2時間ちょっとで終了。会議後、NASAの担当に、本当に予測はあうのか? と聞いたら、笑顔でNASAと空軍の気象予測を信じろ!
 夕方、NASAの記者会見で壇上に登場。英語での記者会見緊張。幸い質問はなかった。

4. 打上げ直前
・ スペースシャトルの打上げが比較的近くにみえ、そばに打上管制センターがあるビルの5Fに劇場のような100人以上入るオーディトリアムホールがある。今回は、霞ヶ関やJAXAの偉い人と一緒に小生も末席に座るVIP扱いとなった。また、日本から開発に関与した企業、役所等の方々も数十人参加。NASA副長官はじめ、カナダと日本の代表者および20名以上の米国下院議員が中央の席にすわる。NASAミッションブリーフィグが厳かに打上げ日の午前0時(打上げ2時間半前)から始まった。まず、全員起立し、星条旗に姿勢をとり、米国国歌がNASAの女性により透き通る歌姫の声で斉唱。その後、中央席の紹介。米国議員の出身州やカナダ国会議員の紹介。格好いい場面。分りやすい今回のミッションの紹介、宇宙飛行士1人1人の紹介等が約1時間で終了。打上げまで、しばし飲み物や軽い食事で休憩。真夜中2時半。カウントダウンがはじまると、JSCやKSCの知り合いが、時たまそばに来てもうすぐだ、日本のモジュールがあがるぞと言いにくる。子供をつれた家族が招待されていて、日本の宇宙飛行士古川さんの宇宙飛行士ブルースーツをみつけサインを頼まれていた。アジアの宇宙飛行士はめずらしい。
・ 打上げは予定通リ、正確に、バリバリの身体に響く音響、真っ暗ななか、花火のような光があたり一面ひろがり、昼のように明るくなってスペースシャトルはゆっくり上空へ上がっていった。雲が上空にあり、その中に吸い込まれていった。NASAの知り合いが、笑顔で“Congratulation!”をいい、握手をしてくれた。いい日だった。

以上
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