関西P2M研究会コーナー
次号

関西P2M研究会コーナーの開設にあたって

関西P2M研究会 主査 小石原 健介:4月号

 このたび、オンラインジャーナル渡辺貢成編集長の勧めで関西P2M研究会コーナーを設けることになりました。この研究会は、PMAJの支援のもとに関西におけるP2M資格者のコミュニティとして、平成18年4月に発足しました。現在、研究会には、約40名が参加し、テーマごとに5つの分科会に分かれて活動を行っています。参加者は、ITソフトをはじめ、建設、プラント、機械製造、医薬、電気製造、電設、インフラ、学界、不動産、教育、コンサルなど多くの異分野に及んでいます。 また、2年目からは、新たに中国人女性の戴春莉さんをはじめ3名の女性が加わり、活動に新風を吹き込でいます。運営は、定例の全体会議のほか、分科会ごとの会合・ネット上でのバーチャルな形の論議、合宿、成果発表会などを通して行われています。正直いって、当初はこれほど多くの参加者による活発な活動になるとは、予測していなかったもので、幸いというほかありません。

 コーナーの開設にあたり、最初にコミュニティとしてこうした活発な活動を生み出だした要因や活動を通して得られる有益な成果について述べ、現在各地で展開されようとしている研究会活動へいささかの参考になれば有り難いと考えています。また、これから連載されるコーナーへは、研究会参加者全員による投稿を予定しています。内容については、多士済々の個性溢れるメンバーがそれぞれ個人的観点から物事を論じたもの、意の向くままに日常業務や生活について述べたもの、研究会活動を通して感じたことなど、変化に富んだ興味深いエッセーが登場するものと期待しています。今後、このコーナーが多くの読者によって愛読されることを願ってやみません。

1. 活発な活動を生み出した要因
@ 魅力あるテーマの選定
 初年度にNHKの人気番組として知られる「プロジェクトX」をテーマの一つとして取り上げたことも、活動全体に強い関心を呼び、活性化の要因となった。そして2年目には、時宜を得た新たなテーマとして「情報システムの中国へのオフショア開発に関する研究」が加わり、また「IT技術者としてのあるべき姿」や「オフショア開発のあり方」について深い知見を持つ中国人女性の戴春莉さんの参加も手伝い、分科会のメンバーは、当初の6名から日ごとに増え現在13名による盛んな活動を展開している。この分科会での多数のメンバーによるネット上での意見交換や顔を合わせての熱のこもった論議は、研究会活動の全体を大いに盛り上げている。

A ハイレベルで活動的な人材の参加
 参加者の多くは、専門家としての深い知見を持つ者、また、それぞれの職場で要職にある者など、いずれもハイレベルで活動的なメンバーである。その結果、参加者同士が相互に有益な影響を与え合い、コミュニティ活動へのモチベーションを高める要因となっている。

B 事務局の果たす役割と貢献
 ボランティア活動をベースとするこの種の運営に当っては、事務局の果たす役割が大きい。幸い、関西においては、PMAJ関西事務所が情報センターとしての役割を果たすと共に研究会参加への勧誘や会合場所の提供、メンバー間の積極的な交流の推進にとって大きな陰の支えとなっている。

2.研究会活動への参加を通して得られる有益な成果
@ 異文化交流を通しての自己啓発
 業界や専門分野、経験、知見の異なる参加者がP2Mという共通のコミュニケーションのツールを使い、一つのテーマについて議論を進めることは、さまざまな発見があり、互いに得るところが大きい。最初は、意見や考え方の相違から議論は拡散、迷走しながらも、次第に一つの方向へと収斂されていく過程は、参加者の視野、思考の幅を広げ、互いの自己啓発にとっても大きな魅力といえる。

A P2Mの理念への理解の深まりを実感できる喜び
 いずれのテーマについても共通していえることであるが、P2Mの理念には、実践事例への展開を通して、はじめて理解を深め得る領域が存在している。特に、テーマ「P2M企業競争力型アーキテクチャの事例研究」では、難解とされるプログラム統合マネジメントのプロファイリング、アーキテクチャの理念を異なる業種での事例への展開を通し、その理解を深めている。こうした研究会活動を通してP2Mへの理解の深まりを実感できることも喜びの一つといえる。

B 活動を通しての自己実現
 分科会活動は、それぞれが一つのプロジェクトとしての個別性を有しており、かつ、チームの運営や雰囲気、リーダーシップなどにそれぞれ微妙な相違がある。そしてチーム内では、それぞれ個々の持ち味や特長に応じた役割分担が自然発生的に決まり、職場では、なかなか発揮することが難しい参加者にとっての自己実現が図られている。

C 人的ネットワークの活用
 この活動を通して得られる異分野の人的ネットワークは、お互いの知見、保有する情報や人脈などの交換を通して、個人的にも業務の上でも貴重な財産として活用されている。また、この人的ネットワークを通して得られる情報は、新たな研究会参加者の確保にとっても大きな役割を果たしている。

3.今後への期待と課題
@ P2M研究会活動の全国的なネットワークの構築
  現在、この活動は、東京、名古屋、関西、広島、北九州などの各地で進められています。今後、各地での活動との連携を図ることにより、さらに大きな成果が期待できる。

A 産学協同によるP2M研究会
  新年度から大阪大学中之島センターを利用しての産学協同によるP2M研究会の開催を計画しています。今後どのような形での運営が好ましいか、試行の段階ですが、大学院生を交えた活動も今後の研究会の発展につながるものと期待しています。

B プログラム統合マネジメントとしての実践事例
 それぞれの分科会で扱うテーマについては、プログラム統合マネジメントの視点から共通する部分も多い。そこで、これら複数のテーマを互いに有機的に結合させ、相互補完の効果を生かした活動として、研究会全体の活動そのものを対象とする事例研究もテーマの一つとして加えてみたい。

C 研究会活動の充実とP2M資格者への参加を呼びかける広報活動
 現在、全国には3,000名を超えるP2M資格者が誕生しているといわれている。しかしながら、この活動への参加者は、その中のほんの一部の者にすぎない。おそらくほとんどの者は、P2M資格者のコミュニティとしての研究会の存在すら、知らないのが実情ではなかろうか。今後は、P2Mセミナーでの成果発表をはじめ、さまざまな機会を通して、一人でも多くのP2M資格者にこの活動について知ってもらうための積極的な広報活動が必要といえる。そして、この活動への積極的な参加を促すためには、さらに有益な成果を生み出し、魅力ある活動に育てていかねばならない。

 このたびのP2M研究会コーナーの開設によって、日頃この研究会に参加し、活動しているメンバー一人ひとりの生の声を伝えることにより、研究会への関心と理解を深めて頂き、活動の輪を少しでも広げていくことができればと願っています。同時にこのコーナーの開設がPMに関心を寄せるジャーナル読者の拡大への一助となれば幸いです。
以上
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