メッセージ

「国際プロジェクト & プログラムマネジメント・シンポジウム2008」完了の報告

理事長 田中 弘:4月号

 当協会の今年度の重要事業である、「国際プロジェクト & プログラムマネジメント・シンポジウム2008 (IP & PMS 2008) 」は3月10日・11日の両日、「組織のPM力の強化」をテーマに東京都タワーホール船堀で開催され、成功裏に完了しました。
 世界の参加者から、大会の質と運営力そして東京の都市の魅力に多くの賞賛が寄せられており、PMAJのプレゼンススのみならず、日本のイメージアップにも貢献したと感じております。以下に重要事項について報告します。

● シンポジウム参加者
国内からの参加者は490名(計画300名)、また海外からは20カ国70名(計画 50名)、」合計560名に参加いただき大盛況でした。
参加国は、アルファベット順に、 Australia、Austria、Cameroon、China、France、Germany、India、Indonesia、Kazakhstan、Korea、Myanmar、New Zealand、Russia、Singapore、South Africa、Sri Lanka、UK、Ukraine、USA、Viet Namでした。

● 大会プログラムと参加状況
シンポジウムの最終プログラムでは、基調講演5件、提携協会基調講演1件(PMI)、トラック講演は次のトラック構成と発表件数となった。
プログラムマネジメント・PMガバナンス 5件
エンジニアリング・建設・製造のP & PM 7件
ICT のP & PM 8件
グローバルPM・PMの将来 7件
P & PM人材育成・基盤整備 7件
国際協力・開発プロジェクトのPM 6件

トラックは6つ設けたが、参加者が特定のトラックに偏らず、ほぼきれいな分布となりスピーカーの皆さんにも喜ばれた。

● 来賓スピーチ
来賓スピーチ 来賓として、経済産業省製造産業局国際プラント推進室國友宏俊室長が英語でスピーチをされた。経済産業省・(財)エンジニアリング振興協会・PMAJのこれまでのPM振興と現下の取り組みを話され、政府の新経済成長戦略のバックボーンであるイノベーションの推進における新たなPMの位置づけを説いたスピーチは海外参加者に強い印象を与えた。

● 基調講演
大会テーマに徹底的にこだわり厳選した基調講演6件は、期待通りの内容で参加者から高い評価を得た。
基調講演 トップバッターの三井物産戦略研究所の寺島実郎所長の「戦略的プロジェクトマネジメントの視点」では、我が国きってのグローバルストラテジスト寺島氏の視点で、国際社会のなかで我が国のポジションが変化している事実を様ざまなデータを織り交ぜて解説され、この変化を高い視 点で見抜きながら明日を築くプロジェクトを創生していくことが重要であると説かれた。

基調講演 海外代表の NASA Academy のEd Hoffman 本部長は、NASAの人づくり、PMの仕組み作りそしてPMO機能としての NASAアカデミーの役割と、NASAのプログラムマネジャーやプロジェクトマネジャーに求められる伝統的な使命と新たな使命について大変明解に話された。 「NASAの上級プロジェクトマネジャーに求められるのは単にミッションの達成のみではなく、米国の、世界のイノベーションの担い手としての構想力やミッションの達成を商業化技術に導くプログラムマネジメント力まで含まれる」というコメントは鮮烈であった(まさにP2Mが希求するところだ)。
PM協会代表として、IPMAチェアマンのAdesh Jain氏からは、「PMのグローバル展望とアジアへの意味合い」の演題で、人間の英知のP & PMへの結集が明日を開くとの力強い講演があった。
主催者PMAJを代表しては、清水基夫名古屋工業大学教授から「グローバルエコノミーの時代のビジネスインフラ構築方法論 - P2M」、そして、世界のPM学の大御所で海外最高のP2M学者である仏リール大学院大学学長 Christophe Bredillet教授から”Global Perspective of P2M’s Strength”という題で、各々、新版P2Mのコア部分の紹介、その戦略的意味付けと、グローバル視点からのP2Mの特長を述べられ、再びP2Mを世界の風に乗せるのに絶妙であった。
企業代表は英国 Fujitsu Services の Programme Director Peter Melville-Brown氏であった。同社は英国政府の厚い信任を受け、一連の大規模基幹システム構築と Business Process運用(アウトソーシング)を担当している立場から、「英国公共サービスの変革に葉明日プログラムマネジメントの役割」と題した、大会テーマにまさにマッチする名演を戴いた。
また、提携協会基調講演では、予定されたIPMA代表が急な健康上の問題で出席不可となったのは残念であったが、PMI Directorである Dr. Ed Andrewsから、エン振協とPMAJが結んでいる提携協定のフォーカス領域であるPMリサーチとPM高等教育に関して現状と今後の展開予測、そして、エン振協とPMAJのこの分野での貢献に期待が寄せられた。

● 大会運営
2001年以来の国際大会開催であったが、完璧な運営ができた。タワーホール船堀はPMシンポジウムで使いなれた会場であり、会場運営計画が完璧であったことと、海外参加者については、的確に対応できる限度である60名程度にターゲットを絞り、同一ホテルでの宿泊・チャーターバスでの移動を計画・実施したロジスティック上の戦略が奏功した。PM大会の運営力はその国のPM力のバロメータであり、今回の国際大会では、コンベンション会社を起用しないPMAJネットの運営力の実証であり、海外参加者に強いインパクトを与えた。

● シンポジウムの成果
本シンポジウムの開催目的は、下記の2点にあった。
我が国プロフェッショナルPMソサエティーの創設10周年にあたり、PMの東西交流プラットフォームを提供し、世界PM界での役割分担を果たす。
新版P2Mガイドブックを世界PM界に発信し、併せて我が国のPM力を世界に示す。
これらの目的は、次の通り、無事達成することができた。
  「PMの真の東西交流の実現」
@ PMAJは世界で中立のPM協会であるが、PMIとも世界42か国PM協会連盟であるIPMAとも親密な関係にあることから、双方の陣営から一流の講師を招聘することができた。これは他の世界大会では成しえないことである。
A 次に、ロシア協会、ウクライナ協会、カザフスタン協会、韓国協会、中国協会、シンガポール協会並びにインド協会との友好関係から、これらの協会の首脳を中心として数十名の講師・参加者を獲得できた。カザフスタンPM協会とシンガポールPM協会には世界PM大会で初の発表を成し遂げる舞台を提供できた。
B 加えて、PMAJと協力協定を有する仏ESC Lille (Lille Graduate School of Management) より、全面的な協力を引き出し、Christophe Bredillet学長を筆頭に5名の教授・准教授の参加と講演を得た。
C ICTトラックは「アジアIT回廊のPM比較」をテーマに実施し、ここでもインド、中国、ミャンマー、ベトナムの大手企業に国際PM大会での初発表の機会を与えることができた。
D 以上から、次項と相俟って、世界のPMリーダー達から、「高質でバランスが取れたシンポジウム・プログラムを実現し、真のPM東西交流を実現した」との評価を得ることができた。
E 今回は、世界のPMリーダーと共に、次世代を担う方々に積極的に発表のチャンスを提供したが、彼らがひとしく大会での自らの成果に強く触発されており、PMAJへの強い信頼を勝ち取った。
  「新版P2Mのお披露目とP2M適用事例報告」
@ 新版P2Mガイドブックのコアを紹介する清水基夫教授の基調講演は、参加者に強い感銘を与え、これを受けてのP2Mのグローバルな視点での特長を説いたChristophe Bredillet教授の基調講演は、このインパクトを増幅することとなった。
A 並行トラックでは仏リール大学院大学、日本ユニシス(株)、ゼッタテクノロジー株、松下電器産業(株)、鹿島建設(株)、PMAJ渡辺理事、同川勝理事から合計7件のP2M事例の報告があり、各々しっかりと参加者を集めて、P2Mの息吹を世界に伝えることができた。
B新版P2Mガイドブックの第1部から第3部の暫定英訳版を会場で提供したが、引っ張りだこの人気であった。早速、P2Mに対するポジティブな反応が4カ国から出ている。
C 国際PMシンポに併設のGAPPSのワークショップでは、主査のDr. Lynn Crawfordより、GAPPSのプロジェクトマネジメント編・プログラムマネジメント編の職能要件にP2Mの要素をマッピングするとの発表があった。これで、具体的にP2M資格保有者をGAPPS Qualifications保有者に読み替える道筋が付けられる。
  「日本のPM力の世界への発信」
@ ここでも日揮(株)、東洋エンジニアリング(株)、(株)日立製作所、富士通(株)、日本電気(株)、PMAJ IT-SIGより発表があり、日本産業のPM力を示すのに質・量共に十分であった。
A P2Mガイドブックに熱心に取り組んで戴いている(独)国際協力推進機構 ? JICAからは杉下上級専門家より、JICA医療セクターのグローバル展開について、極めて質の高い、かつ現場密着の発表があり、今回特設の「国際協力プロジェクトのPM」(IPD)トラックの口火として高い評価を得た。
B ちなみに、本シンポジウムの国際メディアパートナーであり、開会式のマスター・オブ・セレモニーを務めて戴いた PMFORUM.orgからは、世界の20万人の読者に向けて、7本の大会記事が配信されている。
● シンポジウムの成果を今後に生かす
本シンポジウムの成功は、国際PM界でのPMAJの信用をより高めることに繋がり、また、ネットワークの輪をより広げることにも役に立った。P2Mに関しても、海外参加者の間でこれまでとは違った良い反応が出始めている。これらのポジティブシグナルをPMAJ成長への糧としていきたい。

以上
ページトップに戻る