メッセージ

「地上から宇宙への質問」
−5月号への回答ー

長谷川 義幸:6月号

質問1 :衛星の故障について
衛星等の飛行中に故障が起きていますが、地上からの指令であたかも回復したかのよう任務を復帰することがよくありますが、ハードウエアもソフトウエアもバックアップを搭載していること想像できますが、数日後、数ヶ月後にリカバリーしているケースもあるようですが、衛星のリカバリーの仕組みはどのようになっているのか、すべてが2重、3重の冗長構成にはなっていないと思うのですが。

回答1
1957年に人類初の人工衛星が宇宙を飛行するようになって以来、日本も外国の衛星も有人宇宙船も、地上から打ち上がったら修理にいけない特殊事情からさまざまな工夫をしてきました。 最近の人工衛星も宇宙船も、生命線の部分は冗長構成を設置するようにしていますが、すべて冗長構成をとれるわけではありません。例えば、電源、コンピュータ、通信等のシステムは、大部分2重系を構成していますが、電力を発生させる太陽電池パネルは羽を広げた格好をしていますが、冗長にするにはこの羽をもうひとつ別な場所に配置する必要があります。 重量や配置場所、コストの点から難しい面が多いです。
 現在まで衛星や宇宙船の飛行中に不具合が起きたのは沢山あります。 不具合が発生すると、まず、何がおきたのかを地上で受信している人工衛星のデータから判断し、現在の状態を把握します。 先ごろも、通信衛星で機能障害がおきましたが、直ちに予備系に切り替えて対処しています。 原因は、後で宇宙放射線の影響で電子機器でビット反転が発生したためと判明しました。 多くの不具合では1次対処として冗長系に切り替えます。 それでもだめな場合には、緊急処置を行います。最近の人工衛星は、アンテナやセンサーを地球に向けた姿勢を常時維持する装置を搭載しています。時たま、太陽からプラズマの到来や、センサーの故障でその姿勢が維持できなくなるケースがあります。その場合、姿勢の状態によっては温度が非常にさがったり、高温になったりするので、搭載電子装置や回転機構が機能しなくなる場合があるので、まず電力を確保するため、太陽電池パネルを太陽に向けるようにします。さらに、消費電力をさげるため不必要な電気を切ります。 このように検討の時間を確保した上で、様々なデータを人工衛星から取得し、原因を特定します。そして、回復計画を立て、シミュレータを使って検証します。原因が特定できていないで拙速に判断をすると2次災害になります。原因は1つと限りませんので、慎重に判断します。その上で、いよいよ管制センターから指令信号を送信します。数日も数ヶ月もかかって回復させているのは、大きな故障で対策に時間がかかるためです。当初の想定運用と異なる場合には、人工衛星のコンピュータソフトウエアをそっくり新しいものに置き換える場合もあります。この場合には数ヶ月かかる場合もあります。
人工衛星への地上管制センターよりの指令
質問2 :宇宙船の空気はどのくらいで入れ替えるのか。
宇宙船は外気といれかえられないが、船内の空気をどの程度で入れ替えしているのか。

回答2
すぐには返答が難しい大変いい質問です。
(1) 宇宙船内の空気発生から空気の入れ替えのやり方
 宇宙ステーションは、アメリカ、ロシア、日本等15カ国が各々独自で製作した約10個の宇宙実験棟や居住棟を宇宙で連結させた大型宇宙船です。謂わば、実験棟が列車1両分で、それがいろいろの方向に10個連結されていると想像ください。 完成時には、船内の広さ930m3(ジャンボ機の1.5倍)になります。 まず、空気の発生は、水の電気分解による酸素製造をロシアの居住・実験棟が役割を担っています。そして、空気成分を地上と同じ1気圧、酸素分圧21%に維持、これをダクトと空気循環ファンにより連結している各実験棟に送ります。 各実験棟キャビン内は、空調設備によりキャビン内に空気のよどみが生じないように循環させています。日本実験棟の場合では、搭乗員の作業快適性を考慮して風速は弱すぎず、強すぎない毎秒 約7cmから20cmの範囲に設定します。 使用した空気は、搭乗員が代謝するガスにより汚れており、キャビン空気を集め、ダクトによりロシアの実験棟に送られます。二酸化炭素は搭乗員の生命に支障がでるため、合成ゼオライト等により吸着、真空状態で脱気して宇宙空間へ排出します。

(2) 船内の空気の入れ替え時間
 飛行機と異なり、実験棟同士は連結されており、かつ、連結部は常時開けっ放しで各実験棟間で空気の出入りがあります。そのため、空気の一循環は@実験棟内換気、と A実験棟間換気の2つの分かれます。 @では、約10分 、Aは、約10分から約30分の間です。
 Aで時間が異なるのは、各実験棟間のはファンによって空気がやりとりされます。定常状態では圧力の増減なしにこれが行われますので、宇宙ステーションの換気周期と各実験棟の換気周期は同じになります。各実験棟に設置される実験装置は、最初は少なく、段々多くなってきます。つまり、換気対象容量が変動しますので、装置が少ないときは換気時間がかり、装置が増えてくると時間が少なくてすみます。
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