投稿:どうしたマンション業界

PMAJ関西支部 岡本政義:4月号

 昨年来の一級建築士による首都圏のマンション、ホテル耐震強度偽装事件は、その偽装案件の多さから想定外の事件としてマスコミに大きく取り上げられ、テレビによる国会での参考人喚問を含め国民に大きな関心をあたえています。 
 しかし決定的な対応策が出ず、マンション住民は、いまだに生活の基盤を失われ途方にくれ、またホテル経営者においては、その損失をめぐり訴訟に発展しています。
 世界でも優秀な耐震ノウハウをもつと思われる地震国日本が、耐震強度偽装という事件をおこしたことは、はなはだ不可解であり、あってはならない事件であります。
 この業界の非常事態には、被害者の救済、偽装問題、再発防止策の3つのプロジエクトの立ち上げによる個々の解決が必要と思います。
 第一の「被害者救済プロジエクト」は、責任のなすりあいは別途解明するとし被害者救済に、国としてのアクシヨンが必要であり、小田原評定している場合ではありません。
 第二の「偽装解明プロジエクト」ですが、2度にわたる国会参考人質疑を経ても、その解明は遅々として進んでいません。耐震強度偽装という人命にかかわる悪魔的発想は倫理面からみて完全に想定外の思想であります。時間をかけてその解明に全力を注いで頂きたいと思っています。
 私が最も重要と思うのは、第三の「再発防止プロジエクト」であります。世間の動揺を抑えるためにも、問題の核心をとらまえた早期対策が必要であります。対応策としては、デベロッパーが、今回のように、設計、施工を分割発注していることが問題と思っています。デベロッパーは、顧客の満足を得る立地条件、品質、魅力的な価格を提供することによる顧客獲得に専念し、建設は、設計込みの一貫体制をもつ建設業者に発注することが最も有効な再発防止策ではないでしょうか。
 首都圏で38万円/m2がその地域での販売単価とみたのなら、DTC(Design to Cost、マーケットプライスにて受注して利益を生み出すコスト創り)を前面に押し出し複数の建設業者にその要求を明確に出し協力体制を築くことが重要であります。限界設計にチャレンジしデベロッパーの要求に沿うべくコスト低減に徹する業者選択が重要であります。
 設計込みの一貫体制の利点は、コスト低減の70〜80パーセントを占める設計を自社内でおこなうことであります。

 また、今回のように構造設計をアウトソーシング(外部委託)する場合においても、これをチエックする社内組織を持っていることであり、今回の事件のように、これを見抜けなかった第3者検査会社の責任云々の問題ではありません。すべてを請け負う建設業者の自己責任であります。業務のアウトソーシングは、業務の効率化とモチベイション向上の手段の一つでありますが、性善説による丸投げは論外であります。
 再発防止策の早期実施にむけ業界としての統一見解が問われる時期であります。エンジニアリング系の筆者が投稿するのは、確固たる足跡を残されている建設業界・マンション業界の方々に申し訳ありませんが、僭越ながら、あえて思ったことを投稿致しました。マンシヨン業界の更なる発展を祈ります。

以上