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「PMのリース業への挑戦(1)」

向後忠明:2月号

 私はこれまで“昔取った杵柄”そして“転ばぬ先の杖”等をJPMFのオンラインジャーナル紹介されてきたものです。
 これらのエッセーの中でも説明してきましたがプロジェクトマネジメントは幅広く各業界や分野に応用できることが分かりました。
 これまで一般的に言われているプロジェクトマネジメントはPMBOKに述べられているような、どちらかと言うと与えられた要求や企画に従って、その計画を立て、そこに示される目標を効果的・効率的に達成するための管理・遂行手法と考えられています。
 よって、プラント建設や建物・設備、IT等の設計から据付・構築の請負会社を対象としたマネジメント手法として有効でした。
 しかし、昨今では技術・市場そして社会の急速な変化に伴う変革に対応する手法としてプロジェクトマネジメントが各企業や団体に求められています。
 すなわち、経営戦略・企画と言った変革に対応するような仕組み作りの活動にもプロジェクトマネジメントが必要になってきていると言うことです。
 そこで思いついたのが“プロデュサー”と言う用語です。これまで30年以上のプロジェクトマネジメントに携わってきて、各種の分野の仕事をしてくるとプロジェクトマネージャの最後の形はプロデュサーではないかという気がしてきています。
 プロデュサーという言葉には明確な定義はありませんが、所属する業界や企業の役職呼称によって少しずつ異なってきます。
 一般的に良く知られ、使用されている業界はテレビや映画であり、映像コンテンツ制作ビジネスにおけるコアーとなる人のことを指します。
 プロデュサーは映像コンテンツの制作といった芸術的側面だけではなくコンテンツに求められる社会的要望や市場動向を考えた戦略やシナリオ作りが必要となってきます。そしてその具体化のためのプログラム戦略を考え、複雑な契約関係を理解し、製作資金の調達そして人や関係リソースの調達と言ったビジネス的な側面もこなさなければならない。そして、コンテンツのマーケッティング、運用そしてそのフォローアップと言った全プロセスにわたっての各種マネジメント活動を行うことになります。
 ビジネスの世界でも、世の中の各種技術の動向や業界の動向を見てビジネスの仕掛けや仕組みつくりを行い、その具体化のためのシナリオ作りそしてビジネスの具体化のための資金調達先や受け入れ先の調整、場合によってはその活動の中心人物として活動を行う人をプロデュサーと言えます。
 このようにプロデュサーの仕事の内容を見るとP2Mで言われているプログラムマネジャの活動内容に近いような感じがします。
 すなわち、顧客のトップは常日頃、社会、市場の変化や動向を見て、企業としての生き残り戦略を考えていなければなりません。そこで企業のトップには現状打破のための変革が求められるのです。
 さて、企業が変革を求められたらまず何から手をつける必要があるか?
 勿論、トップの考えていることを正確に把握し、企業を取り巻く各種環境を考慮しながら現状のプロファイリングを行い、As isからTo beモデルのシナリオを考え、最適な変革モデルを作ることにあります。
 その後、事業化妥当性検討と言ったいわゆるフィージブル検討により、お金の面からの検討を行うことになります。
 さて、ここからが現在の金融業の関係する場面が出てくるのですが、残念ながらこの段階でも金融業の出番は今のところ有りません。
 PMAJに所属する会員や関係者のほとんどがプラント、ITそして建設等の設備建設・据付や場合によってはソフトウエアー開発のような仕事に携わる人達だと思います。
 そこで、金融業(銀行)そしてリース業のようなノンバンクの仕事を理解してもらうため簡単に説明すると、金融業(銀行)は金を集めその金をなるべく安全な企業や団体に貸し付け、預かった金と貸した金の金利差で商売をしています。
 リース業は顧客が購入する物品を肩代わりで購入し、それを何年かにかけてある料率で貸し付け、その料率にて商売をしている。これが基本的なビジネススキームです。
 このように見ていくと如何に単純な仕事をしているかが良く分かります。しかし、昨今の社会・市場の変化そして競争の激化が金融業やリース業にも迫ってきていることを察知し、例えばストラクチャードファイナンスといった金融技術を駆使した手法で不慣れながらも新しい分野を手がけようとしています。
 しかし、これも金融関係企業のこれまでの体質から、常にリスクを取らないことを前提とした事業推進なので、相変わらず倒産などの心配が無い大企業や優良企業を相手とした与信をベースとした事業のみです。
 特に、リース事業になると銀行よりも大変であり、より一層の工夫が必要な業界です。

 私もこれまで2年ほど金融業の一端であるリース業に勤めていましたが、すでに話したように金融業やリース業の仕事はコーポレート与信を中心としたローリスク、ローリターンな融資やリースを主体としています。
 そのため、企業内審査も有名企業案件のみに集中して合格させるが、名もない企業や有名な企業でもそれが例え優良案件でも却下されることになります。
 特に、コーポレート与信のつかないベンチャー企業やSPCを組成してこれからビジネスを立ち上げるような企業の場合は特別なケース以外は融資やリースの対象とはしません。
 このような環境の中で、この分野にまったく素人のPMが“何をどうしてきたか”を今年は話してみたいと思います。