PMプロの知恵コーナー

レジオネラ菌による肺炎発症体験

小石原 健介 [プロフィール] :9月号

 この7月21日突然体温が40℃を超え、激しい全身の震えとフラツキで神戸市立医療センター西市民病院へ娘と家内により救急搬送。胸部レントゲンで肺炎と診断され、救急入院しました。そして、抗生剤の点滴で治療を開始。入院後2日間は、文字通り生死をさ迷い、全く自分の力では身体を動かすことができず、介護老人の世界を経験しました。40℃を超える高熱では、肉体は完全に死んでいたと思います。なぜか頭だけが研ぎ澄まされていました。
 幻覚による死後の世界は、鮮明なカラーのビューティフルな風景が瞼に浮かび、一瞬、瞬きをすると消えさり、また次々と新しい映像が浮かんできます。まさにこれが死後の世界だと認識することができました。そしてだんだん死後の世界へ入って行くのを救急センターの若い女性の看護師の、はい!こちらを向いて!目を開いて、との瞳孔反応チエックの力強い呼び掛けにより現生へ呼び戻してくれました。彼女の鋭い目差しと不思議なオーラは忘れることができません。まさに彼女は命の恩人です。

 その後、抗生剤の点滴にはレジオネラ菌撃退の点滴が加わり、幸い4日目になり体温が36.5℃の平熱に戻ると同時にそれまでは高熱で食欲はゼロ、気力もゼロだった身体が急速に回復してきました。多分抗生剤の点滴にレジオネラ菌撃退の点滴を加えたことが効を奏し、レジオネラ菌が死滅したのだと思います。医療現場の医師、看護師スタッフによる多分世界でも最高の現代医学療法に助けられたのだと思います。合わせて私自身の治癒力にも大いに助けられたと思っています。なにしろこれまで72kgあった体重がこのほんの僅かの間で67kgへ、治癒力のため5kgの筋肉を消耗していたことになります。

 今回の肺炎は通常のものとは全く異なり、レジオネラ菌の感染によるものでした。このレジオネラ菌の発見は1976年米国ペンシルベニア州米国在郷軍人大会が開かれた際、参加者と周辺住民221人が原因不明の肺炎にかかり、一般の抗生治療を行ったが、34人が死亡しています。新種のグラム陰性桿菌が患者の肺から多数分離され、発見された細菌は在郷軍人(legionraire)にちなんでレジオネラ菌と名付けられています。

 この菌の病原性は環境中に普通に存在する菌であり、通常では感染症を引き起こすことはありません。ただし、感染し易い環境下では、特に高齢者など抵抗力の少ない人々にとつて、感染しやすいといわれています。またこの菌の病原性は低く、健康人がただ風呂に入っただけでは感染しません。空調冷却水内で増殖した菌が冷却塔から飛散したり、入浴施設の水循環装置や浴槽表面で増殖した菌がシャワーなどに利用されたり、浴槽の気泡装置で泡沫に含まれたりして、それが気道を介して吸入され肺に存在すると感染し発病します。日本でも毎年数人がレジオネラにより死亡しています。

 また、肺炎を発症した際、血液中に含まれる「C反応性たんぱく」の含有量を測定する検査にCRP血液検査があります。一般的に「免疫比濁法」と呼ばれる一定量の血液中に含まれる定量を測定する形で検査が行われます。人体内で炎症性の刺激や細胞の破壊が生じると急激に増加する物質を「急性相応物質」と呼び、「C反応性たんぱく」は体内の炎症症状を発症すると「発症から2~3時間」という短時間の間に急激に血中量が増加する特徴を持っています。更に「C反応性たんぱく」は「2~3日間」で血中量がピークに達し、ピーク後は急速に血中量が低下していく特徴を持っています。CRP数値の一般的な基準値は0.3以下、1.0~2.0の数値では、中程度の炎症などが検討される範囲とされています。また15.0~20.0の数値では、重体な疾患の発症の可能性が検討される範囲がとされています。CRP数値は値が高まるほど発症の度合いが高い、もしくは細胞の破壊が進んでいる状態である可能性が高いことが分かっています。基準値よりも高い場合に疑われる病気の可能性としては、
・ウイルス性感染症・細菌性感染症・悪性腫瘍・心筋梗塞・膠原病があります。

 ところで今回の感染ルートについては全く謎で分かりませんが、前々日実家に帰って一泊しました。可能性としては風呂の湯か家庭用の加湿器が何らかの原因で菌の増殖に繋がったのではないか?推測する外はありません。

 なにしろ発症した21日のCRPの数値が18.2、翌日22日の数値が19.4、一般的な基準値が0.3以下であることを考えると、あり得ない数値です。身体内は大炎症が起き40℃を超える高熱に犯されていました。73歳の年齢を考えると、本当によく生還できたと思っています。そして退院が決まった前日のCRPの数値は3.0で正常値の0.3以下には程遠い値でした。ところが8月8日の退院後のレントゲン検査と血液検査の結果では、肺炎は完治、退院時3.0のCRPの数値も0.2へ下がり完全に元へ戻りました。いずれにせよ今回の思いがけないレジオネラ菌による肺炎発症を通し、幸い生還できことは、強運であったと神に感謝したいと思います。

以上

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