革新的な研究成果を如何に生み出すか? YOUNG SIG活動の一環として
現在, 筆者は東北大学高度技術経営塾の卒塾生(博士学生がメイン)を中心に, R&Dをテーマとした研究会を東北で立ち上げる予定である. この活動は, 東北PM研究会活動とYOUNG SIG活動を兼ねた試みである. 筆者は, このような若手世代メインの研究会を各地方で立ち上げて, いずれは地方同士が連携することで, 日本全国の活動にしていきたいと考えている.
博士学生は, 普段研究活動を中心とした生活を行っており, 革新的な研究成果を創出するために, 日々尽力している. 5年間の研究生活を通じて私は, 各研究者の研究成果の質は, 研究者本人の実力に加えて, 教員の実力や方針, 及び研究室の組織風土の影響を強く受けると感じた. 今回私が議論したいのは, 何故研究室や研究者によって, 研究成果の質に違い生じるのかという点である. もちろんこれを, 個人や教員の能力やテーマ, 運に依存すると結論付けるのは簡単である. 私は, 優れた研究室及び研究者には共通の規範、行動特性があると考えている. この規範や行動特性を, PMを用いて一般化し応用すれば, 研究組織ひいては日本全体の研究開発力が向上するのではないかと考えている. 東北PM研究会(YOUNGSIG活動の一環)では, PMを利用した研究開発力の向上を目的とした活動を立ち上げたいと考えている.
研究活動をPM化するうえでの, 最も簡単な例を挙げる. 研究活動をPDCAサイクルで表現した図を示す. このPDCAサイクルを各個人の頭の中で回すことで, 研究活動を効率的に行うことが可能である. 私は, このPDCAサイクルを回すための訓練を教員から受けていることを後々知った. このように, 研究活動を様々なPMの手法を用いて適応することで, 研究開発力が向上するのではないかと考えている.
ただ, このように研究活動をPM化するだけでは, 優秀な研究者を育成することはできない. 何故ならば, 研究活動は創発活動でもあるからである. 研究活動を如何に効率化しても質の高い研究立案ができなければ, 革新的な研究成果を創出できない. そこで, 私は研究活動の見える化・効率化を行うだけでなく, どのように考え, 行動すれば質の高いアイデアが出せるか?その羅針盤作りも行いたいと考えている.
研究立案力を向上させるためのヒントになると考えている書物を一つ紹介する. 「イノベーションのDNA」(クレイトン・クリステンセン著、翔泳社)は, スティーブジョブスやマイケルデルなどの破壊的イノベーターが, どのような行動特性があるかを示した書物である. この書物では, 破壊的イノベーターの共通点として, 以下の点が紹介されている.
①関連付ける力 ②質問力 ③観察力 ④ネットワーク力 ⑤実験力
この書物では嬉しいことに, 人間の創発力を遺伝的素質で説明できるものは30%ほどであり, 創発力は学習を通じて習得できると紹介されている. すなわち, 上記の行動特性を研究者にも当てはめ養成すれば, 研究立案力を誰でも上達させることができるのではないかと考えている.
今回のジャーナルでは, 東北PM研究会(YOUNGSIG活動の一環)において, R&D研究会を立ち上げるうえでの大まかな方針を紹介した. 今回のテーマは, 活動の効率化と人間の心理に関連することであるため, このテーマを議論するうえでは多様な視点からのご意見が不可欠である. 今後の活動をおこなう際に, 皆様のご意見・ご参加をお待ちしております.
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