PMRクラブコーナー
先号   次号

研究開発活動とP2M

日本ユニシス株式会社 総合技術研究所 星野 隆之 [プロフィール] :2月号

 私は、2006年より研究開発系のプロジェクトに従事しております。弊社における研究開発活動は、ビジネスの維持・発展を目的として、中長期的な視野での新技術の獲得を行うものです。具体的には、3~5年後にビジネスに適用できると思わる技術を調査し、実用に足る技術を、実証実験を通して評価を行った上で、新技術としてビジネス部門に提供する活動を行っています。
 研究開発プロジェクトで重要なことは、研究開発におけるスキーム、システム、サービスの各フェーズをシームレスに繋げてプロジェクト運営を行うことです。実際にビジネスに適用するフェーズ(=サービスフェーズ)を意識して、プロジェクトの成果の「あるべき姿」描き、それに基づきスキームを練り上げ、計画に基づいた研究開発活動を行うことが、弊社において有益な研究開発活動に繋がります。
 プロジェクト成果の「あるべき姿」を描くためには、ゼロベースの発想は欠かすことができないと考えています。研究開発活動を行う上で陥り易い誤りとして、研究者が自分の研究テーマに囚われ過ぎ、研究成果をどうビジネスに活かすかという発想よりも、自分のテーマの研究開発をどう実施するかという発想に偏ってしまうという場面に遭遇することがあります。これは、本来、手段に過ぎない研究開発活動が目的と化してしまうことに他なりません。P2Mの用語で表現すれば、システムフェーズ(=研究開発活動)だけに囚われ、サービスフェーズ(成果を実際のビジネスに適用し活用する活動)を意識していないということになります。
 研究開発プロジェクトで有効な成果を得るためには、P2Mの考え方は非常に有効であると認識しています。以下では、研究開発計画を練り上げるにあたり、サービスフェーズを意識したスキームフェーズの実行を実現するために行った、私どもの工夫(P2Mの考え方の適用例)をご紹介します。
 基本的な決めごととして、研究リーダに、研究活動着手前に、研究テーマに関するプロファイルを記述してもらい、上位マネジメントを加えたレビューを行うようにしました。この研究テーマのプロファイルには、研究の内容、期間、主要アクティビティ、成果物はもちろんのこと、「その研究成果を適用できるビジネス」に関する展望も記述します。「研究成果がどのようにビジネスに適用できるか」を、研究活動の着手前に予め考え、活動計画の中に組み込んでおくことで、研究活動の出口を明確化するようにしました。このことにより、サービスフェーズを円滑に実行できるプロジェクトを設計することが期待できます。
 「研究成果がどのようにビジネスに適用できるか」を洞察するためには、研究テーマにだけ目を向けているのではいけません。研究開発部門の次工程(=お客様)である事業部門の声に耳を傾ける必要があります。私どもは、社内に複数ある事業部門との意見交換の場を設定し、研究開発部門が進めようとしている研究開発テーマの説明と、事業部門が求める技術のヒアリングを行っています(「ゼロベース発想」と「マーケットインの発想」を実施)。これにより、ビジネスを遂行する事業部門と、研究開発部門のギャップを明確にすることができ、研究すべき技術の「あるべき姿」を明確することが可能となります。
 このように、P2Mの考え方を適用することで、「ビジネスへの適用」を十分に考慮した研究活動のスキームを構成することが可能になることを実感し、スキームフェーズの重要性と、サービスフェーズを意識することの重要性を再認識しました。今後も、P2Mの考え方に基づき、更に質の高い(=より多くの成果をビジネスに適用できる)研究開発を実施していきたいと思っています。
以上

ページトップに戻る