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〜いまどきの成長する人の条件〜

百日紅(さるすべり):ペンネーム [プロフィール] :6月号

 人事関係の仕事をしている立場上、春は新人研修に関わる日々が増えます。新人だけでなく、「去年の新人」と関わる機会が多いのもこの季節です。そんな仕事を通して感じた「成長する新人」について書いてみたいと思います。

  実はチームプレーが苦手

 私はヒューマンスキルを高める研修やワークショップのファシリテーターをしています。新入社員が入社する時期は、社会人の基礎力(※注)をつけてもらう狙いから、周りの協力を引き出したり、周りの人に協力したりしながら成果を出すための行動を学んでもらう研修をすることが増えます。そんな研修の場で打ち解けあった新人さんと話をしていると、「年上の人と何を話せばいいのか分からない」「面倒くさいお付き合い(人間関係)はしたくない」「チームで仕事するなんて聞いていない」・・・新人のほとんどが、そんなことをこっそり教えてくれます。
 いまどきの若者は、と言われそうですが、確かに集団行動ができない、チームプレーが苦手、というのが最近の新人さんの特徴のようです。そんな特徴を理解されている企業が増えているために私の仕事があるのですが、そのことに気づかず、入社時の訓練をしていない企業では、新人さんが配属された現場では困っているかもしれません。

注 社会人基礎力:経済産業省が提唱している、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」

 負けたくない。だけど、時々涙が出ちゃう

 特に今年の新人は就職難で苦労しているので、会社に入ったら「周りには負けたくない」「認めてもらうぞ!」と意気込みが違います。理論武装して、自分を良くみてもらおうとする姿勢をよく見かけます。また、「勝ち組」「負け組」という言葉がはやった時代に思春期を過ごしたせいか、「個が主」や「学の競争」を意識しやすく、よりいっそう、勝ち負けにこだわり相手に弱みを見せない新人さんが多いように感じます。
 大学では最上級生として扱われ、就職戦線を勝ち抜き、自信満々で入社してくる新人さん。しかし、会社に入ると、分からないことだらけ。当たり前なのですが、知っている知識を出すよりも、先輩・上司から教えてもらうことが多くなります。場合によっては同期にさえ教えを乞うこともあるかもしれません。試用期間で、これまでの自信やチャレンジ精神が揺らぎ、少し弱気になる新人さんは、けして少なくありません。苦手な「チームプレー」を苦手と言えず、苦労している新人さんも多いのではないでしょうか。

 成長のコツは周りとの関係性

 この季節は、入社して2〜3年の「元」新人さんに再会することも増えます。少し期間をおいて再会するため、新人のころと比較してぐんぐん成長している人と、ちょっと伸び悩んでいる人の差がはっきり見えます。
 ぐんぐん成長し、生き生きと仕事をしている彼らと話をしてみると、「新人のときにうるさく言われたことの意味が、最近よく分かるようになった」「プロジェクトは厳しい状況だけどメンバーが魅力的です」「目標になる先輩を月1で見つけている(笑)」「自分が先輩に教えてもらったことは自分なりの形で後輩に受け継ぎたい」など、周りの人々とよい関係を築いているようです。
 さらに詳しく話を聞くと、彼らは、会社生活や仕事でも早い時期に挫折を経験しています。その時に「プロジェクトのメンバーが仕事を手伝ってくれた」「先輩が一緒に残業してくれた」「実は裏で上司がお客さんと調整してくれていて乗り切れた」など、うまく周りから支援を得たようです。自分が困ったときに、うまく周りに「助けて」と自分から働きかけられた人は、自信を回復しタフなリカバリー力を身につけたようです。もちろん、自分ひとりで苦労を乗り切った人も大きく成長していますが、周りの協力を引き出せた人のほうが、よりたくましく育っているように感じます。
 彼らと話をして、試用期間で急成長する人としない人との違いが大きく2つあるように思います。ひとつは、「我流を貫かないこと」、もうひとつは「環境適応力が高いこと」です。どちらも、周りの人との関係性をうまく築けるかどうかと言い換えることができるでしょう。学生時代は自分ひとりで勉強していればよかったのでしょうが、社会に出るということは、周りの協力を引き出し、うまく巻き込んで成果を出すことが求められます。「チームで仕事をするなんて・・・」と壁をつくっていられないのが社会です。その壁を乗り越えられるかどうかが、成長の分かれ目になっているようです。

 若手が伸びる職場は、組織として伸びる職場

 このような「成長の2条件」を満たす新人さんがとる具体的な行動の例をみると、こんな感じでしょうか。
 ・人の意見を傾聴する、情報をキャッチするアンテナがある(ミーハー心)
 ・疑問があったら、質問する(どうして小僧)
 ・周りのアイデアを吸収する(パクる)
 ・いじられる(良い意味で)
 ・ある程度の弱みを見せられる(物足りなさがある)
 ・新しいことに対して、「まずやってみる」(ダメもと精神)
 ・地域意識にこだわらない(対抗意識は腹だけに)

 根底には自分を持っているけど、他人に意見を押し付けることなく、他人の話も聴きつつタイミングをみて自分の主張を匂わせる。自分なりのこだわりはあるけどもっといいものがあれば、それに乗り換える、そんな「我流を貫かない」「環境適応力が高い」新人さんが3年後、大きく成長しているのではないでしょうか。
 一方で、新人さんが伸びる職場というのも同じように考えることができると思います。こんな新人さんの特徴を理解し、新人だからと先輩の意見を押し付けるのではなく、主張もしつつ、話も聴く。しかし、根底には部門やチームとしての考え方をしっかり持っていて、さりげなく新人さんに伝授する。つまり、新しいメンバーが加わったことをキッカケに、組織自身を新鮮な目で捉え直し、改善点に気づく柔軟さと、新しい人の感覚を受け入れ、時代に対応していく環境適応力の高い組織が、3年後、大きく成長しているのではないでしょうか。

 編集者コーナー
 このコーナーの編集担当二人が語ります。
花水木(はなみずき、以下「は」)「んーとね、“思い込んだら試練の道を〜♪”」
木犀草(もくせいそう、以下「も」)「野球!」
は:「あたり〜。じゃあ、“苦しくったって〜♪”」
も:「バレーボール!」
は:「あたり〜。昔って、こういうがむしゃらに自分の信じる道を進むってスポ根アニメが多かったと思わない?」
も:「そうやねぇ、いまどきの新人さんだったら、“濃すぎる〜”って言いそうかな。」
は:「今回の原稿でも、幅広く周りを巻き込む系が成長するってあるしね。」
も:「でも、あたしは、すぐに助けてって言う新人より、できるだけ自分で頑張ってて、そのがんばり具合みてると、“しょーがないなぁ”ってなる新人のほうが好きかも。」
は:「それも考えようによっちゃ、巻き込みがうまいってことだよね。片意地はって自分でできます!って抱え込んじゃう人は、サポートしようと思わないじゃない?」
も:「そっか。そーやね。ってことは、日ごろから、“この人はこういう人だ”って関係性ができてると、いざって時に助け合ったりできるし、若手はそれで成長するってことか。」
は:「やっぱ、日ごろの関係性かぁ。若い人にはちょっとハードルが高いかもね。」
も:「こっちからハードル下げてあげるのも大事かも。ボケてみるとか。」
は:「それも手だね。ただ、一歩まちがえて、突っ込めない親父ギャグにならないように気をつけなきゃ。」
も:「関係性ができてない人の電話にはでんわ・・・」
は:「下手なシャレは止めなしゃれ」
も・は「・・・・・・ぷぷっ、こりゃないねー!!(笑)」


 編集チーム:花水木(はなみずき:ペンネーム)
PS研究会メンバーで、IT業界のなんちゃって技術職。現在は、流れ流れた末に、研究機関に勤務し、ITエンジニアのスキルアップとキャリアを研究している。長年にわたり、プロジェクトという閉ざされた空間で、いかに個人が幸せに過ごすかを追求中。花水木の花言葉は「私の思いを受けて下さい」と「華やかな恋」。当コラムの編集チームの編集長。
 筆者・編集チーム:木犀草(もくせいそう:ペンネーム)
関西弁バリバリのPS研究会メンバー。キャリア形成をメインテーマに研究活動中。本業ではIT企業の人材育成企画と並行してPMOを担当。現場を走り回ってます。木犀草の花言葉は「陽気、快活」。プロジェクトをサポートする木犀草になりたいな。当コラムの副編集長。
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Partner Satisfaction PS研究会について:PS研究会は、財団法人日本科学技術連盟のソフトウェア生産管理(SPC:Software Production Control)研究会のひとつで、2002年から動機付け(モティベーション)に関する研究を続けています。2003年から、PMAJ(旧:JPMF)のIT-SIGのひとつ「パートナー満足と人材活用(PS&HM)ワーキンググループ」としても活動しています。詳しい紹介はこの連載の第1回目をご覧ください。
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第45回目2010年5月号  〜働きやすい職場なんだけれど〜(松ぼっくり)
第44回目2010年4月号  〜お願い上手になりませんか〜(銀杏)
第43回目2010年3月号  〜分かってないことを分かる〜(木犀草)
第42回目2010年2月号  〜めげない心・折れない心〜(花みずき)
第41回目2010年1月号  〜じょうずに「ごめんなさい」〜(松葉簪)
第40回目2009年12月号  〜「ないよりまし」の方針の話〜(楠木)
第39回目2009年11月号  〜リーダーシップはあなたの中に〜(杉の木)
第38回目2009年10月号  〜コミュニケーションのきっかけ〜(山桜桃梅)
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第35回目2009年7月号  〜苦しい時には待ってみる〜(扁桃)
第34回目2009年6月号  〜ポジティブな雰囲気を醸し出すリーダシップ〜(木犀草)
第33回目2009年5月号  〜「終わりよければ‥・」は真にあらず〜(はなみずき)
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