今月のひとこと
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文化と文明

オンライン編集長 岩下 幸功 [プロフィール] :2月号

 文化と文明という言葉があります。そして「企業文化」「組織文化」という言い方をしますが、「企業文明」「組織文明」という言い方はしません。この違いは何でしょうか?
 文化(Culture)とは:
@原義は「都市(城)を築く」という意味
A人類が生みだしたもの全て、特に都市が生みだしたもの
B衣食住をはじめ技術・学問・芸術・道徳・宗教・政治など生活様式一般。
C人間の精神的生活にかかわるもの、思想・道徳・芸術などの精神的所産
Dどちらかと言えば、無形、精神的なもので、ソフトウエア側を指す
 文明(civilization)とは:
@原義は「都市化」という意味
A技術の発展のこと、特に建築の技術が象徴的である
B技術の向上によってもたらされた「道具」や「機械」、さらには「インフラ」等
C文化の中で優越した文化が、他の文化にまで影響を与えるようになったもの
Dどちらかと言えば、有形、物質的なもので、ハードウエア側を指す

 文化とは、地域で暮らす人々の間で生まれた、土地特有の生活様式(生活の仕方や行動の仕方)のことであり、それには、生き方、習慣、技術、科学、思想、宗教、芸術、法律、政治制度その他であり、料理も、育児も、教育も、遊戯も、排泄も、そのあり方のすべてを含みます。従って、地域に根差した民族のアイデンティティにかかわる、内面的なものであり、特定の集団においてのみ通用する特殊なものです。不合理で、普遍性を持たない、民族のソフトの遺伝子というべきものです。
(注:中国語の「文化」とは「文徳で民を教化する」という意味で、Cultureとは異なる)
 一方文明とは、元々固有の文化であったものが、他の文化に浸透したものです。例えば「技術」です。「鉄」を利用する生産技術・加工技術・利用技術は文化の違いを超えて普及し、鉄文明を形成しました。この「技術」には、統治のための制度やその運用方法(例えば律令制や資本主義のシステムetc)なども含んでいます。その時代の支配的な文化のことで、文化的なアイデンティティの最上位の概念と言えます。

図1 文化 vs. 文明 先ず文化があり、その中から突出した要素(例えば、技術や制度等)が、文化的な枠組みを超えて、他の文化に普及したものが文明です。 別な言い方をすれば、ローカルなものが文化で、その中でグローバル化したものが文明と言えると思います。その意味で、現代はアメリカ文明であり、資本主義文明という表現は許されるでしょう。翻って日本は、日本文明ではなく日本文化でしょう。同様に企業も組織もローカルに閉じている範囲では、「企業文化」「組織文化」という表現でよいことになります。



 この観点から、日本企業のマネジメントと欧米企業のそれとを比較してみました。
図2 日本企業 vs. 欧米企業 日本企業は「文化」指向であり、欧米企業は「文明」指向である、それも意図した文明指向であるということが分かります。
 今後、「文化」と「文明」の棲み分けはどのように推移していくのでしょうか? 一極集中の文明に収斂するのか、多様な文化に基づく多極分散になるのか? それとも、文明と文化併存の統合分散になるのか? 恐らく、第3の道だと思いますが、その場合はそのバランスが重要だと思います。

 何を残し、何を捨てるか、そして何を文明として発信するか。プロダクトか、サービスか、それともライフスタイルか、はたまたマネジメントか・・・?
「文化」と「文明」いずれが優位かということではなく、そのバランスは「PMの日本化」を議論する上で、押さえておくべきポイントだと考えています。
以上
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