先月号 次号 川勝良昭 : 11月号
  [プロフィール]      
夢工学(37)




第6部 悪夢工学式性格分析評価法の誕生

1 インタープレーと創造性

●モーツアルトのリ・インカーネーション
本当には起こり得ない「リ・インカーネーション(reincarnation)」が作曲家のモーツアルトに起こり、21世紀の現在に甦ったら彼は一体何をするだろうか。

彼は恐らくジャズを好むだろう。そしてインタープレーの存在が最も試されるジャズ・トリオ演奏に参加し、後世に残る素晴らしい即興演奏を行うだろう。何故なら彼が生きていた時代には即興演奏が盛んに行われていたからである。

●現在のクラシック演奏家
クラシック音楽に於いて「ピアノ即興曲」、「バイオリン即興曲」、交響楽曲の中の「カデンツア」などがある。これらは即興演奏が当時盛んに行われていたこと証拠である。モーツアルトが生きていた時は、現在の様な演奏を録音する方法がないためすべて演奏記録は採譜しかなかった。従ってピアノやバイオリンによる素晴らしい即興演奏が行われた時は、演奏家がその時の興奮を楽譜に懸命に記録したのである。

また交響曲の演奏でバイオリン奏者などが「カデンツア」を演奏する。これは演奏家が最も力を入れて弾く箇所の一つである。これも本来はバイオリン奏者に作曲家が「この箇所はあなたの心の思うままに、感じるままに即興演奏して下さい」とわざわざ与えた箇所である。昔の演奏家はこの箇所で自由に弾いていた。

しかし現在のクラシック演奏家は、記録に残された譜面を弾くだけである。その意味では彼らは、インタープレーを発現させるが、即興演奏という創造性を発現させることは全くしない。音楽的な創造性の面ではクラシック演奏家はジャズ演奏家よりも楽な道を選んでいる。あるいは堕落しているとも言えなくはない。いずれにしても筆者にとっては日本で演奏されているクラシック音楽は退屈で魅力がない。もっともクラシック音楽の線上にある現代音楽は極めて創造性が発現されている。しかし極めて難解で楽しくない。

●マイルス・デイビスは現代のベートーベン
音楽に興味がない読者には筆者の余談は退屈であろう。しかし興味のある読者のためにもう少し付き合って欲しい。

さて筆者がジャズ演奏家の「マイルス・デービス」がクラシック音楽の永遠の巨匠「ベートーベン」に譬えたことに驚かれるだろう。この考えに賛同する日本のジャズ音楽家は多い。日本のクラシック音楽家は賛同しないが、米国のクラシック音楽家は賛同する。

マイルス・デイビスは、ジャズ音楽の世界に「モード・スケール」という考えを導入し、実践した革命的音楽家である。モード・スケールの起源は、ヨーロッパに昔から存在した「ある教会音楽」と言われている。

Dドリアン・スケールでA、A´、サビのBでE♭ドリアン・スケール、最後のA´でドリアン・スケールに戻る「So what」という曲は、マイルスの代表作である。筆者がこの曲をマイルスが演奏したのを初めて聞いた時、鳥肌が立ったことを今も鮮明に覚えている。彼と共にモード・スケールを広めたジャズ音楽家達は、遂にモダンジャズという新しい音楽分野を確立した。今は亡きマイルスの創造的、音楽的功績は偉大である。

●音楽の世界とビジネスの世界
インタープレーの重要性は、ジャズの世界だけでなく、ビジネスの世界、日常の生活でもいえることである。それは、ジャズの様な音楽の世界ではインタープレーがビジネスの世界などもより具体的、より強烈に、より明確に認識される点が著しく違う。もし演奏の場でインタープレーを正しく実践されないと直ぐその場で悪い結果が出る。

もっともビジネスの世界や日常の生活でもお互いの意思疎通というインタープレーに大きい問題が生じ、ギクシャクした関係が潜在化するとたちまちその場でマズイ結果が出ることがある。



2 交流分析(Transactional Analysis)

●人間の世界は人との関わり
あらゆる時代のあらゆる分野の人間は、自分と自分以外の人間との関わりで生きてきた。そして今も自分と地球上の64億の人間の誰かと関わりを持ちながらで生きている。

この自分と自分以外の人間との関わりであるインタープレーの重要性は、筆者をして無数にある性格分析評価法の中から「交流分析(Transactional Analysis)」の考え方に注目させた。ヒントとなったものは、交流分析のすべてではない。その中の「人生の基本的姿勢」と言われる部分である。これは、交流分析の心理療法の七つのジャンル(自我状態、ストローク、人生姿勢、人生脚本、人生ゲーム、時間構造、対話分析)の一部である。

交流分析とは、精神分析医の故エリック・バーン博士(Dr. Eric Berne 1910〜1970 米国人)が精神分析を応用して考案したものである。これは、パーソナル精神分析理論であり、心理療法である。また人物評価論、コミュニケーション理論、児童発達理論などとも深く関連している。交流分析の内容説明は専門書に委ねたい。

●悪夢工学式・人格評価法の誕生
人間社会は自分と自分以外の人間とのインタープレーで成りたっている。この点に着目した交流分析の考えを下敷きにして筆者は「悪夢工学式・性格分析評価法」が構築した。なお交流分析は性善説に立脚しているが、悪夢工学は、性善説でも、性悪説でもない中立説に立脚している。




●地球人=64億人の性格全体図
悪夢工学的発想の方程式、即ちインタープレーの基本である「自分と他者への考え方」 × この世で唯一の存在である自分への「意識の有無」で64億人の地球人を評価すると、すべての人物はこの全体図(以下に掲示)に入る。



●全体図の四角枠外の人物
性格形成の過程にある乳幼児、幼児、幼稚園生、小学生、中学生あたりまでの人物は、悪夢工学式・性格分析評価の対象外である。また二重人格者、多重人格者、精神異常者、精神薄弱者、痴呆障害者など性格異常者もこの分析の対象外である。もし多重人格者や精神異常者などが人々に悪夢を引き起こした場合は、犯罪学、犯罪社会学などの分野で扱うものである。
 
●全体図の四角枠内の人物
心理学者、精神科医、カウセラーなどは、四角枠外のいわゆる性格未発達者または性格異常者を主として研究対象にしている。しかし四角枠内のいわゆる性格正常者こそが世の中に悪夢をもたらす人間が最も数多く存在するのである。何故彼らはそのことに気付いていないのだろうか。悪夢工学が直目した領域である。

●悪夢工学式・性格分析評価法
四角内=性格確立者且性格正常者に関する「悪夢工学式・性格分析評価法」については次号で詳しく説明したい。

(つづく)